国鉄10形蒸気機関車 保存

国鉄10形蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 04:57 UTC 版)

保存

17の公開運転(麒麟麦酒専用線、1969年)
昭和炭鉱で使われた15(沼田町)
宇佐神宮境内に保存される26

本形式は堅牢かつ高性能で長命を保ったため、国鉄籍を得たものでは留萠鉄道15, 17、大分交通26の3両、その他に川越鉄道から防石鉄道に移った2の計4両が保存されている。

15, 17は留萠鉄道の廃線後流転を重ねることになる。15は地元の沼田町に寄贈のうえ保存されていたが、鉄道100年を記念して同機を主人公とした映画が制作されることとなり、札幌の泰和車輛で動態復元され、九州への「里帰り」も果たしたが、映画制作は頓挫してしまった。1973年(昭和48年)9月には大井川鉄道(現・大井川鐵道)へ入線し、17とともに構内運転に供された。その後、15は沼田町に返還され、同町の文化財に指定、1989年平成元年)に開設された沼田町ふるさと資料館内の専用庫で大切に保存されている。

一方の17は、1969年に池袋の西武百貨店オークションにかけられて話題をまいた。同機は販売希望価格の3倍近くの価格で個人が落札したものの売買には至らず、105万円で別の個人が落札し、同年10月には鶴見の麒麟麦酒専用線で公開運転が行なわれ、1970年(昭和45年)には日本万国博覧会にて展示された。その後は蒸気機関車の動態保存を模索していた大井川鉄道へ1971年(昭和46年)2月に入線し、井川線千頭 - 川根両国間で使用され、2109とともに日本における蒸気機関車の動態保存の草分け的存在となった。大井川鉄道での運転終了後は、1983年(昭和58年)に岩手県遠野市に寄贈され、「クラウス17号を走らせる会」が結成されて動態整備が行なわれ、数回公開運転会が実施された。しかし、その後の保存状況が悪化したことから所有者が返還を要求、同市内の遠野駅前に展示されていたが、2000年(平成12年)6月に同市の「万世の里」に移設され、さらに現在は栃木県那須烏山市の那珂川清流鉄道保存会が引き取っている[3]。17の流転は絵本『はしれクラウス』[4]にも描かれている。15は、2010年(平成22年)に北海道旅客鉄道により準鉄道記念物に指定された。

26は廃車後、その歴史的価値を認められて宇佐町(現・宇佐市)に寄贈され、宇佐神宮境内に保存されることとなった[5]1966年(昭和41年)には、「形式10・26号機関車」として準鉄道記念物に指定されている。また、2005年(平成17年)3月29日には、「宇佐参宮線26号蒸気機関車」として大分県の有形文化財に指定され、2007年(平成19年)夏にはその経歴をまとめた絵本『しあわせなクラウス』が出版されている[6]

防石鉄道2は、1964年の廃線後も周防宮市駅構内の車庫に放置されていたが、同社の記念物として保存されることとなり、現在は山口県防府市防府駅近くの鉄道記念広場で、防石鉄道の客車2両とともに静態保存されている。


  1. ^ 厳密には図面番号 (Zeichnungsnummer) と呼ばれ、メーカーの形式図管理台帳の通し番号であったと考えられている。基本的には基本設計が共通するものについて数字部分が同一とされているが、構造も寸法も異なる車両が同じ番号にカテゴライズされた例もあった。
  2. ^ 正式名称はハノーファー機械製作所 (Hannoversche Maschinenbau Aktiengesellschaft) 。ハノマークあるいはハノーマグとも呼ばれる。ただし、これら3両は実際にはヘンシェル社製であった。
  3. ^ 保存車両 クラウス17号”. 那珂川清流鉄道保存会. 2008年4月9日閲覧。
  4. ^ 神戸淳吉/文、ふじさわともいち/絵。1980年金の星社刊・ISBN 4-323-00212-2
  5. ^ “26号蒸気機関車〜大分県宇佐市:近代遺産を訪ねて”. 読売新聞. オリジナルの2012年7月15日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/tXxC 
  6. ^ “大分県文化財の蒸気機関車・クラウス号が絵本に”. 読売新聞. (2007年8月24日). オリジナルの2012年7月10日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/Mpg5 






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