国鉄ワム60000形貨車 国鉄ワム60000形貨車の概要

国鉄ワム60000形貨車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/03 03:24 UTC 版)

国鉄ワム60000形貨車
ワム60000形、ワム66172
2009年9月17日、三笠鉄道記念館
基本情報
車種 有蓋車
運用者 日本国有鉄道
東日本旅客鉄道
九州旅客鉄道
所有者 日本国有鉄道
東日本旅客鉄道
九州旅客鉄道
製造年 1961年(昭和36年)
製造数 8,580両
消滅 2001年(平成13年)
主要諸元
車体色
軌間 1,067 mm
全長 7,860 mm
全幅 2,885 mm
全高 3,700 mm
荷重 15 t
実容積 38.1 m3
自重 9.8 t
換算両数 積車 2.0
換算両数 空車 1.0
走り装置 二段リンク式
車輪径 860 mm
軸距 3,900 mm
最高速度 75 km/h
テンプレートを表示

概要

輸送体系近代化を企図して先に製作された汎用の二軸有蓋車ワム70000形の設計を基に、設計の合理化と機械荷役への適合とを重視した設計変更がなされた車両である。1963年(昭和38年)までに8,580両(ワム60000 - ワム68579)が製作された。

ワム70000形に代わって「車扱急行列車」の専属運用に用いられたほか、汎用用途の有蓋車としてワラ1形が開発されるまで製作された。国鉄の各線区で広汎に用いられ、私鉄発注の同一設計車も存在した。1984年2月1日国鉄ダイヤ改正の貨物輸送体系転換で汎用的な運用は停止され、1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化では事業用車代用として8両のみが東日本旅客鉄道(JR東日本)九州旅客鉄道(JR九州)の2社に承継された。これらの車両も、2001年(平成13年)までに全車が除籍されている。

仕様・構造

積載荷重 15 t の二軸有蓋車で、先に量産されたワム70000形の設計方針を踏襲しつつ、組立工法や台枠構造など各部に合理化を企図した対応がなされる。

車体はワム70000形と同様に外部構造を全鋼製とし、妻面と側扉にはプレス加工鋼板を用いる。ブロック組立を採用したこともワム70000形と同様であるが、本形式は最終工程の部材接合をも溶接で施工し、ワム70000形で残存していたリベット接合を廃した。側扉の開口部幅は 400 mm 増の 2,700 mm に拡大してフォークリフトなど荷役機械の使用に配慮し、側扉上部の「鴨居」部分には雨樋が新設された。床板は在来の有蓋車と同様の50 mm 厚の木板、室内の内張りは 20 mm 厚の木板である。

軽量化と製作価格低減に留意し、各部材には自動車用鋼板など汎用規格の鋼材を多用する。妻板も共用化の観点からワム80000形(2代)のものを流用したが、1961年(昭和36年)後半からの車両(ワム61300 - )では専用品の妻板部材に変更されている。本形式はワム80000形(2代)より車体幅が狭いため、初期の車両(ワム60000 - ワム61299)では幅の広い妻板と側面との接合部に段差が生じ、側面が凹んだ形態[注釈 1]となった。床面積は 15.9 m2、内容積は 38.1 m3 で、ワム70000形と同一の積載空間を確保しつつ自重を僅かに軽減 (9.7 t) した。

屋根はワム70000形の角屋根から丸屋根に変更された。これは断熱性能確保のため、屋根板と室内天井板の間に空気層となる間隙を設けるための措置で、屋根を支える垂木は屋根板の内側に移された。

台枠はワム70000形までの「長土台」「長土台受」で車体を支持した構造を廃し、パレット荷役対応試作車ワム80000形(初代[注釈 2]、後のワム89000形)で試みられた台枠構造を改良のうえで採用した。従来、荷重と引張力のみを負担していた側枠を車幅いっぱいの外側に移し、車体支持をも受け持つ構造に変更したもので、在来の二軸有蓋車と異なり側面から側梁は見えない。車軸を保持する軸箱守は台枠に「軸箱守受」と称する部材を新設して接合され、ばね吊受は横梁に移設された。軸距は従前の形式と同一の 3,900 mm である。軸受は平軸受、軸ばね(重ね板ばね)の支持機構は二段リンク式である。

ブレーキ装置は、補助空気溜 ならびに ブレーキシリンダと制御弁(K 三動弁)とを一体化した KC 形自動空気ブレーキで、国鉄貨車が汎用的に搭載するものである。留置ブレーキは片側の側面に足踏み式のブレーキテコを設ける。最高速度は 75 km/h である。

改造車・同形車

国鉄ヤ400形ヤ401
1986年5月24日、高崎操駅
  • ヤ400形
事業用車両(職用車)で、本形式から延べ17両(ヤ400 - ヤ416)が改造された。「信号機器輸送専用職用車」と称し、信号設備の維持補修に用いる機器・消耗品類を輸送する車両で、配給車の一種である。
車内外への荷役用にホイスト(扱重 0.5 t)を設置し、床板には積載した機器を固定する丸環を追加した。室内には整理棚・書状箱・黒板を追設している。内装は種車の木張りのままで、荷重は 5 t である。外部塗色は黒色で、「信号機器専用」「連結注意」の標記がなされた。
改造に供された車両は、1両(ヤ411)以外はすべて前期形(ワム60000 - ワム61299)から選択されている。
1968年(昭和43年)に16両が改造され、東京北鉄道管理局田端操駅常備)に9両(ヤ400 - ヤ408)大阪鉄道管理局安治川口駅常備)に7両(ヤ409 - ヤ415)を配置。車両ごとに運用経路が特定され、側扉に常備駅・運用表を表示して運用した。1975年(昭和50年)に1両(ヤ403)が羽越本線の脱線事故で罹災し廃車され、補充として1976年(昭和51年)に1両(ヤ416)を追加改造。国鉄分割民営化直前の1987年(昭和62年)に除籍され、JR各社に承継された車両はない。
  • 名鉄ワム6000形
名古屋鉄道の自社発注車で、1962年(昭和37年)から1963年(昭和38年)にかけて日本車輌製造で25両(ワム6001 - ワム6025)が製作された。国鉄在籍車と同一設計であるが、外部塗色は青色(ハワイアンブルー)とされ、後年に黒色に変更している。
国鉄の直通認可を受け、三河線常滑線陶器輸送などに充当された。 同区間の貨物輸送が廃止された後、6両が事業用車(救援車)に転用され、舞木検査場(ワム6001, ワム6002)新川検車区(ワム6003, ワム6004)犬山検査場(ワム6005, ワム6006)に配置[1]される。2011年4月1日、ワム6001からワム6006まで全車廃車になった[2]。2021年現在、舞木検査場の2両は解体されずに現存しているが、ほとんど稼働していない[3]
  • 水島臨海鉄道ワム600形
水島臨海鉄道の自社発注車で、2両(ワム601, ワム602)が製作された。国鉄在籍車と同一設計で、国鉄の直通認可を受け使用された。

注釈

  1. ^ 本形式初期車に特有の形態で、「額縁」と通称された。
  2. ^ パレット荷役対応の量産車ワム80000形(2代)が1960年から製作を開始する際に、ワム89000形 (89000 - 89002) に改称された。

出典

  1. ^ ジェー・アール・アール 『私鉄車両編成表 2008年版』 による。
  2. ^ 『私鉄車両編成表 2011』ジェー・アール・アール編、2011年、交通新聞社 187頁。ISBN 978-4-330-22711-5
  3. ^ 『名古屋鉄道 (大手私鉄サイドビュー図鑑05)』2021年、イカロス出版、129頁。ISBN 978-4-8022-1038-6


「国鉄ワム60000形貨車」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国鉄ワム60000形貨車」の関連用語

国鉄ワム60000形貨車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国鉄ワム60000形貨車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの国鉄ワム60000形貨車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS