嘘 嘘の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/09 08:52 UTC 版)

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「嘘」は拡張新字体であり、正字体は「」である。

概要

嘘とは事実に反する事柄の表明であり、特に故意に表明されたものを言う。

嘘の意を含む「ガセ」とは、一部の業界で使用されていた元隠語が一般に普及したものであり、もともとは「偽物」のことである。

アウグスティヌスは『嘘をつくことについて』(395年)と『嘘をつくことに反対する』(420年)の二論文において、嘘について「欺こうとする意図をもって行われる虚偽の陳述」という定義を与えている。この古典的定義は中世ヨーロッパの言論・思想界に大きな影響を与えた[2]

嘘の歴史について語るとき、欧米圏では、旧約聖書に登場する話、カインが弟アベルを殺した後、アベルの行方を問われたカインが「知りません。私は永遠に弟の監視者なのですか?」と答えたことに言及され、それが「人類の最初の嘘」などと語られることが多い。

日本語の「嘘」の語源は古語の「ウソブク」という言葉が転化したものである[3]。ウソブクという言葉は口笛を吹く、風や動物の声といった自然音の声帯模写、照れ隠しにとぼける、大言壮語を吐く、といった多義的な使われ方をしていた。また、独り歌を歌うという意味もあり、目に見えない異界の存在に対し個人として行う呪的な行為を指した。中世に入って呪的な意味が薄れ、人を騙すといった今日的な「嘘」が一般に使われるようになったのは中世後期になってからのことである[3]

多くの文化に於いて、基本的に、嘘は悪いこと、とされる。嘘をつくことは信用、信頼を失う。だが、嘘の中には文化的に許容されるものがある。どのような嘘が文化的に許容されるかは、その文化ごとに異なる。どこの文化でも我欲や虚栄心によってつく嘘は悪いものとされている。

人を救うため、人を傷つけないためにつく嘘もある。仏教では「人に矛盾したことを吹き込み争いを煽ること」は「両舌」(嘘つきの別名である二枚舌の語源)という十悪の罪になるが、人を救うため、人を悟りへと導くために当面の嘘をつく、という方法もとられることがある。大乗仏教国である日本では「嘘も方便」ということわざもあり、人を救うためということならばおおらかに許そうとすることがある。

イギリス等では、他人を喜ばせるための嘘は「white lie(良い嘘)」とする。

相手に気に入られようとして、自分が本当に思っているよりも相手を良いと思っているかのように言うことをお世辞と言うが、お世辞を許容する文化もあるが、そういうことは極力言うべきではない、とする文化もある。

嘘をつかず本当のことだけを話してもコミュニケーションは可能ではあるが、まったく嘘をつかない、という制約があると、人間関係はむしろギクシャクする。こうして嘘は人間関係の維持に役立つ面がありはするが、やはり、人に対して悪意のある嘘が頻繁に語られるような状況では、嘘をつかれた人は疑心暗鬼になり、一般的に人間関係は悪化する傾向がある。

大多数の人は、ある程度の言い訳や責任転嫁などの嘘は無意識的、日常的に行っているので、こうした行為は(道義的、モラル的にはともかくとしても)一応、学問的・精神医学的に言えば「正常」の範囲内である(学問的には、あるべき姿やモラルは脇に置いて、統計的に数が多ければ「正常」、少なければ「異常」と分類することが多いのである)。ただしそれも常識的な範囲を超えたり、統計的に見て一般的な範囲を逸脱するような程度になると、心理学精神医学的には「虚言癖」や「作話症」などに分類されるようになる[注 1]嘘は他者もしくは自分を欺くために用いられる。

[注 2]

嘘をつく動機や技術、事実との関係などによって、嘘は正負、両方の効果を及ぼしうる。

得をしようとして数字をごまかすことを「サバを読む」と言う[4]

自分の年齢について嘘を言うことは「年齢詐称」と言う。

財務諸表に嘘の数字を記載することは粉飾決算と言う。

政治資金収支報告書に嘘の数字を記載することは虚偽記載と言う。

欧米の大人では、聞き手が聞いたとたんに明らかに本当ではないと判ること、つまり明らかな嘘を聞かせて、それが嘘だと互いに十分に知っていることを確認しあって楽しむことがある。一緒に笑うために、ユーモアとして嘘を話すことが多々あるのである。日本の会話では、欧米に比べると、こうした話し方は少ないようである。

嘘の中には規模の大きな集団が組織的に行うものもあり、内容次第では社会に大きな影響を与える。

政府による嘘;「全ての政府は嘘をつく」

アメリカのジャーナリスト、I. F. ストーン英語版は、「全ての政府は嘘をつく All Governments Lie」との信念を持ち、特定の報道組織などに属さず、自力で地道な調査を行うことによってベトナム戦争をめぐる嘘などを次々と暴いていった。アメリカ政府は、ベトナム戦争を行っている間ずっと、アメリカ国民に対して嘘を流しつづけて、政府にとって都合の悪い出来事やデータを隠しつづけ、本当の出来事やデータをアメリカ国民に隠すことで、アメリカの世論を操作し、アメリカ国民の判断を狂わせていたのである。また大手マスコミも戦争の間、嘘の情報ばかり流していた。 (I.F.ストーンが指摘しているように、嘘をつくのはアメリカ政府だけではなく、全ての政府である。たとえば西側の諸国に属する人々は、ロシア政府が嘘ばかりついていること、ロシア大統領みずからやロシアの報道官が嘘の内容の発言をし、政府系のマスメディアでそれを垂れ流しにしていることをよく知っている。また第二次世界大戦中の日本について研究したことのある人ならば誰でも、日本の軍部や日本政府大本営発表という嘘満載の発表および報道を行い、日本国民を騙していたことを知っている。)政府というのは、どこの政府であれ、とんでもない嘘つきだ、例外など無い、というのがジャーナリスト I.F.ストーンの確信しているところなのである。

犯罪と嘘

他人を嘘を用いて欺き錯誤に陥れることを詐欺といい、財産上不法の利益を得ることは詐欺罪である。悪徳マルチ商法や悪徳キャッチセールスなどの詐欺で使われる嘘、また交通事故の被害者を装う当たり屋なども悪質であり、利己的な利益のための嘘(虚偽)により他人に不利益をもたらすことは、法律において罰せられる。また、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合は、偽証罪とされる。


注釈

  1. ^ 日常会話において将来的な予想を外したことに対して「あんなこと言ってたけど、嘘だった」と言う用法が少なからず見られるが、これは誤用である。
  2. ^ 事実に反することが聞き手にあらかじめ了解されている場合は、嘘ではなくフィクションや冗談といったものに分類される。
  3. ^ 心理学者の研究では、患者がかわいそう、と言いつつ実は、本当のことを伝えないことで、患者の残された人生まで支配してしまおうとする動機、最後まで本人の好きなようには絶対にさせないようにしようとする動機が、家族の側に無意識に潜んでいることがあるという。
  4. ^ 「ある高僧がガンになった際、あれほどの高僧なら大丈夫だろうとガンを告知したところめっきり気落ちして予想より早く死去した」というお話、お噺、がしばしば引き合いにだされた。

出典

  1. ^ a b 大辞泉
  2. ^ 香内三郎『「読者」の誕生:活字文化はどのようにして定着したか』 晶文社 2004年、ISBN 4794966407 pp.427-428.
  3. ^ a b 長池健二 日本口承文芸学会(編)「ウソと鼻歌」『うたう』 <シリーズ ことばの世界> 三弥井書店 2007 ISBN 9784838231591 pp.82-83.
  4. ^ 広辞苑 第6版「サバを読む」
  5. ^ 永岑光恵、「嘘 ・だましの神経科学的研究の現在と展望:虚偽検出の観点から」 『科学基礎論研究』 2008年 35巻 2号 p.93-101, doi:10.4288/kisoron1954.35.93
  6. ^ 正直と嘘、脳の側坐核が関係 京大研究結果 8/6 12:06 読売テレビ
  7. ^ 時事ドットコム:うそつき、脳で分かる?=活動領域で解明-京大


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