井原西鶴 西鶴の再発見

井原西鶴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 23:20 UTC 版)

西鶴の再発見

同時代では、有名人であり、人気のある作者であったが、江戸末期には西鶴は忘れられていた[要出典]

明治以後の西鶴再評価は淡島寒月に始まる。彼の「明治十年前後」[9]によると、寒月は山東京伝の考証本『骨董集』を読み西鶴に興味をいだき、古本を漁って幸田露伴尾崎紅葉などに紹介したという。当時山田美妙二葉亭四迷によって推し進められていた言文一致体の文章への違和感もあり[要出典]幸田露伴・尾崎紅葉の二人や樋口一葉などは西鶴調の雅俗折衷文体の小説を発表した[要出典]

明治30年代はロマン主義の隆盛に伴い埋没するが、自然主義文学が起こるなかで、みたび注目を浴びる。例えば島村抱月は「西鶴の思想は多くの点に於いて却つて近代欧州の文芸に見えたる思想と接邇する。個人性の寂寞、感情の不満、快楽性の悲哀、これ併しながらやみがたき人生の真相である」[10]と、また田山花袋は「馬琴の稗史滅び、近松の人情物すたれ、一九、三馬の滑稽物は顧る者の無い今の時に当つて、西鶴の作品に自然派の面影を発見するのは、意味の深いことではないであらうか」[11]と言ったように、紅露一葉の時代は主に西鶴の文体が注目されていたが、この時代になると自然主義に寄せつつその描写や思想的側面に注目が集まるようになった[要出典]

また太宰治は西鶴作品に触発され、12の作品を基に新釈諸国噺を発表し、「私のこのやうな仕事に依つて、西鶴のその偉さが、さらに深く皆に信用されるやうになつたら、私のまずしい仕事も無意義ではないと思はれる」と記している。


注釈

  1. ^ 没年と没年齢からの逆算。
  2. ^ 大坂難波生まれとされていたが、現在では西鶴文学会でも、西鶴の出自は紀州井原家であることが解明されている[要出典]
  3. ^ 『西鶴大矢数』(1681年)の自跋に「予俳諧正風初道に入て二十五年」とあり、これは『誹諧石車』(1691年)の「西鵬誹道に入て三十餘年の執行」とも矛盾しない。
  4. ^ 『誹諧石車』に「西鵬詞に、俳諧程の事なれども、我三十年点をいたせしに」とある。
  5. ^ 翌年出版された『誹諧大坂歳旦』の西鶴句の詞書に「法躰をして」とある。またその句につけた鶴爪の「自由にあそばせ誹諧は花」から、この時に西鶴が隠居したという考えもある[要出典]
  6. ^ 「けんかずき」とよむ、つまり「喧嘩好き」

出典

  1. ^ 岡本勝, 雲英末雄編『新版近世文学研究事典』おうふう、2006年2月、30-31頁。 
  2. ^ a b c d e f 岡本勝, 雲英末雄編『新版近世文学研究事典』おうふう、2006年2月、74-77頁。 
  3. ^ a b c d e f g 中嶋隆編『21世紀日本文学ガイドブック4 井原西鶴』ひつじ書房、2012年5月、142-152頁。 
  4. ^ 『浮世草子目録』(『新群書類従』第七)貞享三丙寅年「西鶴が超凡雄健の筆になりし好色本は、流行其極に達し、翁が最得意の全盛期なりしに、本年遂に好色本差止の令は當路の有司より下されぬ」
  5. ^ 『土橋宗静日記』
  6. ^ (竹内玄々一 1892, pp. 48–49) 27コマ
  7. ^ 上之巻 井原西鶴「近代戯作者の逸なる近松門左衛門は此門にいづるといひ伝ふ」
  8. ^ 江本 裕, 谷脇 理史 (編)『西鶴事典』おうふう、1996年12月5日、27頁。ISBN 9784273029180 
  9. ^ 青空文庫、また『梵雲庵雑話』に収録されている。
  10. ^ 島村抱月、淡島寒月、水谷不倒、徳田秋声「五人女合評」、『早稲田文学』明治39年12月号。
  11. ^ 田山花袋「西鶴について」 『インキツボ』(1909年(明治42年))所収
  12. ^ a b 『西鶴と西鶴本』(元々社、1955年)、『井原西鶴』(吉川弘文館、1958年)
  13. ^ 谷沢永一『執筆論』(東洋経済新報社、2006年)
  14. ^ 上阪彩香 , 村上征勝「西鶴作品の文章分析―先行研究の計量文献学的検証」『研究報告人文科学とコンピュータ(CH)』第2巻第2011号、情報処理学会、1999年4月、1-7頁。 
  15. ^ 西鶴浮世草子の文章に関する数量的研究 ─遺稿集を中心とした著者の検討─-情報処理学会”. www.ipsj.or.jp. 2020年10月29日閲覧。






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