九九式短小銃 派生型

九九式短小銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 01:56 UTC 版)

派生型

九九式小銃

九九式"長"小銃

俗に九九式長小銃とも呼ばれる。「歩兵銃」として開発・生産されたが、実際の全長は前身の三八式歩兵銃よりも若干短い。九九式の系列全体から見ると、生産は少数にとどまる。

試製7.7mm歩兵銃

九九式小銃の前身として、三八式歩兵銃に準じた全長で試作された歩兵銃。三八式をそのまま7.7mm化して槓桿を湾曲化し、単脚を装備した名古屋工廠の第一案と、各部の部品を簡素化して量産及び部品の融通に適した構造とした小倉工廠製の第二案が存在し、九九式小銃は両案の利点を折衷して制式採用となった。[21]

九九式短小銃

初期型
1939年から1941年にかけて初期生産された。対空表尺、単脚を標準装備しており、品質管理も行き届いていた。遊戯銃のモデルにもなっている。
中期型
1942年(昭和17年)から1943年(昭和18年)にかけて生産された。対空表尺、単脚を省略。現役時代に三八式歩兵銃で訓練した予備役兵が召集されて九九式を射撃した際、反動の強さに驚いたとされる。
後期型・末期型
中期型の機関部。遊底が閉鎖され安全子が解除された状態。槓桿の根元は閉鎖時に機関部とかみ合っており、射撃時に遊底が破損する事故が起きても、遊底が後方へ脱落することを防いでいる。
1944年(昭和19年)から1945年(昭和20年)にかけて生産されたもので、生産数は最多。品質について、後期型自体は材質・生産方等基本の作りは保たれていたが、末期型の中でも最末期生産のものは極度に低下している。末期型には表尺がなく固定照門のみが設けられ、射撃距離に応じて照準器を調節することはできないため、銃の仰角を変える見越し照準を行う必要がある。また上部ハンドガードが短縮、銃床のバットプレートは木製に変更のうえ釘で固定、スイベルリング(負革通し)が廃止されて銃床に開けた穴へ縄を通す方式に変更といった省力化が進められた。中には着剣装置まで省略されている製品もある。
末期型は部品精度が落ちているためネジの締まりが悪く、部品脱落が多かったほか、不発や暴発事故も報告されている。木材加工も工期短縮のために銃床の長さが狩猟用ライフル並に短縮されて銃身の前半がむき出しとなり、未乾燥処理で荒削り、ニス塗装もしていないものやニスの代わりにを塗ったものもあった。
九九式小銃(特)
九九式短小銃(海軍では単に九九式小銃と呼称した)を量産しやすくするために簡略化したものに対して海軍が与えた名称。銃身以外は教練銃の製作工場でも制作できるように、機体(レシーバー)・用心鉄・照尺座・弾倉底板等を可鍛鋳鉄製にする、さく杖・遊底覆・背負革を廃止する、尾栓円筒と槓桿とを溶接する等の簡略化が行なわれている。レシーバーには製造番号と検査印を示す刻印以外は何も記載されていない。
米国ではType99 Naval Specialとして知られる本銃は3つのタイプが確認されており、上記の仕様は九九式短小銃では後期型に当たる時期に作られたと思われるものである。これより以前のものは遊底覆がなく菊の御紋の代わりに錨のマークが刻印されており、本来縦書きである形式番号表記が「九九式特」と横書きされている事、後述の構造上の理由により銃身長が26 9/16インチ(675mm)とされる事、表面仕上げがブルーイングではなく黒塗装とされている点を除いては、部品構成は九九式短小銃中期型とさほど変わりはない。末期のモデルでは銃身自体が三八式騎銃に近い21 5/8インチ(549mm)に短縮されており、「Naval Special Carbine」と呼ばれている。
なお、九九式特各型の特徴として、鋳鉄製のレシーバーでは実包の圧力に耐えられない事を見越して、銃身側の薬室部分を拡大し遊底のロッキングラグの溝を切り、レシーバーではなく銃身側でロッキングラグが噛み合う構造となっている。このような構造は後の民生ライフルでも採用されているものであるが、実包の異常高圧の際にレシーバーの緊急用のガス穴からガスを抜く構造である(レシーバーにも想定を超える高圧が掛かる可能性が十分にあり得る)有坂銃の性質を考慮すると、たとえ初期のものであっても九九式特は絶対に実射の用途に供するべきではないと、米国のコレクターの間では結論付けられている[22]
海軍が製造した戦時設計型の急造小銃は他に三十年式歩兵銃の海軍版である三十五年式海軍銃を7.7mm口径に改造したものや、M1ガーランドをデッドコピーし海軍九二式(留式)機銃.303ブリティッシュ弾を使用できるようにしたとされる四式自動小銃などが知られている。
米軍改造型
戦後米軍が接収した九九式短小銃を30-06弾規格に改造したもの。約14万挺が改造され、警察予備隊や韓国軍に配備された。
国民党軍改造型
戦後国民党軍が接収した九九式短小銃を7.92×57mm弾規格に改造したもの。

九九式狙撃銃・九九式短狙撃銃

狙撃銃として九九式小銃・短小銃の生産ラインの中から精度の高い銃を選び出し、機関部左側面上方に九九式狙撃眼鏡(倍率4倍)または九七式狙撃眼鏡(倍率2.5倍)を装着したもの。九九式小銃をベースとする九九式狙撃銃と、九九式短小銃をベースとする九九式短狙撃銃が開発・採用されているが、短小銃と同じく実際に主力狙撃銃として量産・配備されたのは短狙撃銃である。

試製7.7mm騎銃

九九式小銃の制定後に、三八式騎銃及び四四式騎銃をベースに7.7mmとしたものが試作された。前者が第一案、後者が第二案として検討されたものの、採用は見送られている。

試製一〇〇式小銃

九九式短小銃を基に、帝国陸軍の落下傘部隊である挺進部隊向け小銃として試作されたテラ銃の一つ。百式小銃とも。ドイツ降下猟兵向けのKar98kパラトルーパー・テイクダウンライフルを参考に、同銃と同様のネジ山噛合い式の銃身・機関部分離機構を実装した。銃身と機関部の接合部分には4山のノコ歯ねじが切られており、差し込んで1/4ほど捻る事で結合が完了する。分離時にはボルトハンドル(槓桿)もボルト(遊底)から引き抜いて別に携行する事が出来た。結合完了と同時に銃身及び照星をズレ無く正立させるには高度な工作精度を要求されるため、当時の日本の工業力ではこの構造の分離機構の量産を行う事は難しく、本銃の開発は試製に終わった。この後に三八式騎銃を元に、試製一〇〇式よりも量産が容易な折畳み銃床式とした試製一式の試作にも挑んでいるが、こちらも折り畳み機構の耐久性に難があり試作のみに終わっている。

なお、Kar98kテイクダウンライフルは、日本の試製一〇〇式よりも完成度が高かったものの、本格的な量産には至ってはいない[23]

試製テラ銃

試製一〇〇式及び試製一式と同時期に試作されたテラ銃。資料によっては四四式騎銃を基にしたとされる場合[24]や、試製一式として紹介している場合もある[25]が、現存するものは九九式短小銃を基に四四式騎銃後期型のスパイク式折畳銃剣を取り付けたものとなっており、製造工廠とシリアルナンバー以外に型式を示す刻印は存在しない[26]。海外では非公式に試製九九式テラ銃とも呼ばれている。

試製一〇〇式のネジ山噛合い式の銃身・機関部分離機構を簡素化し、結合部を差し込み式としてクサビ状のネジを回して固定する構造に改められた。これは後の二式小銃とほぼ同じ固定方式であるが、ネジの位置が二式小銃とは左右逆となっている。この銃が直接の原型となり、二式小銃が開発されたとみられる。

二式小銃

九九式短小銃を薬室部分から二分割可能にし、銃袋に入れて持ち運べるようにしたもの。分割部分は金属で補強してある。「挺進落下傘いしんっかさん)」に由来して、テラ銃二式テラ銃という呼称・略称がある。「空の神兵」としてパレンバン空挺作戦で戦果を挙げた、空挺部隊たる挺進部隊(挺進団)の挺進兵に配備するために開発された。

九九式小銃(挺進用)

製造に手間のかかる二式小銃の代替として1943年10月に制定された挺進兵用小銃。既に大量生産されている九九式短小銃を転用して二式小銃と同様の分解機構をもつものに改造することにより、増産を容易に行なえるようにした。


  1. ^ 陸軍技術本部『小銃審査の件』大正8年~昭和13年」 アジア歴史資料センター Ref.C01007115500 
  2. ^ 陸軍技術本部『八九式旋回機関銃仮制式制定の件』昭和4年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001315300 
  3. ^ 陸軍技術本部『八九式旋回固定機関銃実包並同擬製弾仮制式制定の件』昭和5年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001240600 
  4. ^ 陸軍省『九二式重機関銃仮制式制定の件』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C12121818000 
  5. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃弾薬九二式普通実包仮制式制定の件』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001317900 
  6. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃制式制定の件』昭和14年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001750800 
  7. ^ 陸軍技術本部第一部『昭和八年六月三十日軍需審議会に於ける応答事項』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C12121818200 
  8. ^ 銃砲課『九九式小銃外四点仮(準)制式制定及陸軍技術本部研究方針追加の件』昭和15年」 アジア歴史資料センター Ref.C01004909300 
  9. ^ 陸軍技術本部『九七式車載重機関銃弾薬仮制式制定の件』昭和12年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001625300 
  10. ^ 陸軍技術本部『九七式車載重機関銃仮制式制定の件』昭和12年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001630800 
  11. ^ 陸軍軍需審議会『弾薬統制要領規程の件』昭和14年」 アジア歴史資料センター Ref.C01004670200 
  12. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃外一点弾薬中改正の件』昭和15年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001857200 
  13. ^ 梅本弘 『ビルマ航空戦・上』 大日本絵画、2002年11月、p.344
  14. ^ 井川一久『日越関係発展の方途を探る研究 ヴェトナム独立戦争参加日本人―その実態と日越両国にとっての歴史的意味―』2006年、日本財団、42頁
  15. ^ 枪起机落:用步枪击落日寇飞机的八路军宋岭春中国中央電視台「科技博览」节目,2007年7月30日。
  16. ^ ポール・T. ギルクリスト「空母パイロット (新戦史シリーズ)」1992年、朝日ソノラマ
  17. ^ オア・ケリー「F/A-18の秘密 (新戦史シリーズ)」1992年、朝日ソノラマ
  18. ^ Walter, John (2006). Rifles of the World (3rd ed.). Iola, WI: Krause Publications. p. 33. ISBN 0-89689-241-7. https://books.google.com/books?id=Eq2Dnj4sDZIC&pg=PA33 
  19. ^ a b c 津野瀬光男『小火器読本』かや書房、1994年、91-93頁。ISBN 978-4906124060 
  20. ^ 伊藤眞吉「鉄砲の安全(その4)」『銃砲年鑑〈'10~'11〉』全日本狩猟倶楽部、2010年、117頁。ISBN 9784915426070 
  21. ^ 試製七.七粍歩兵銃 - 藤田兵器研究所
  22. ^ arisakatype99page - Carbines for Collectors.com
  23. ^ 試作一式テラ銃 - 25番
  24. ^ 小橋良夫『日本の秘密兵器(陸軍篇)』学習研究社、2002年
  25. ^ TAKI'S HOME PAGE IMPERIAL JAPANESE ARMY PAGE - Rifle
  26. ^ Experimental 99 Paratrooper Rifle - Military Surplus.com






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