九九式短小銃 戦後の九九式短小銃

九九式短小銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 01:56 UTC 版)

戦後の九九式短小銃

戦後、日本占領地域に遺棄、または降伏に伴う武装解除により接収された日本軍兵器が各国の独立戦争内戦などで使用されており、多数の日本軍の小火器が使用された。

国民党軍により鹵獲された九九式短小銃のいくらかは、7.92×57mmマウザー弾用に改造された。この改造を施された九九式短小銃はレシーバーが幾らか切り取られた事で元の刻印が無くなった為、新たに七九二式なる型式が刻印されている[18]

朝鮮戦争の勃発を受けて、大韓民国国軍の小銃不足を補うため、アメリカ軍が接収した九九式短小銃を改修して装備することになった。これは薬室を削り直して7.62mm×63弾(.30-06スプリングフィールド弾)を使用できるようにするもので、改修は東京兵器補給廠(TOD)で行われていた。また日本で警察予備隊が発足するとこちらにも配備されることになり[19]、名称は九九式口径.30小銃で、配備数は約75,000挺、改造のベースとされた九九式短小銃は日本国内の他米国からも供与(返還)が行われたという[20]

しかし、元々全く特性の異なる実包を用いていたものを改修したことから、下記のように多くの問題が指摘された[19]

  • 腔圧や薬室・薬莢起縁部の径に大きな差があり、材質・径・装薬の違いによって銃身破壊や薬莢の縦割れが発生するリスクが高い
  • 九九式短小銃は重量が軽いにもかかわらず、銃身が長く初速が大きくなるため、反動が増大して命中率が落ちる
  • 30-06弾は弾底形状の関係から火薬ガスによる圧開を期待できず、また7.7mm口径の銃身で7.62mm径の30-06弾を使用することから、未発射銃でも残存命数が0.02mmしかないことになり、横転弾のリスクが高い
  • 弾倉部を改造したため給弾不良のリスクがある

陸上自衛隊武器学校で行われたテストでは銃身破裂などの事故が頻発したことから、陸上幕僚監部ではただちに射撃禁止の措置をとった[19]

本来の九九式短小銃は当時の軍用ボルトアクション式小銃でも高性能な部類に入るものだったが、大戦末期の戦地や戦後の日本国内より米軍兵士が持ち帰って評価の対象としたのが末期型であったため、戦後アメリカでは粗悪銃と評価されていた。

また、アメリカやカナダではスポーツライフルとしても流通している。アメリカ国内で製造される7.7x58mm Arisakaが使用されており、貫通力が強く、大型獣の狩猟に使用される。グリズリーなどの大型動物を即死させることができるといわれる。

ルバング島で30年間身を潜めていた小野田寛郎予備陸軍少尉が手にしていた小銃としても知られる。この際、弾薬は島内に遺棄されていた戦闘機から引き上げた7.7x58SR機関銃弾(薬莢が九二式実包と同様の半起縁型で交換の必要あり)を改造して使用していた。


  1. ^ 陸軍技術本部『小銃審査の件』大正8年~昭和13年」 アジア歴史資料センター Ref.C01007115500 
  2. ^ 陸軍技術本部『八九式旋回機関銃仮制式制定の件』昭和4年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001315300 
  3. ^ 陸軍技術本部『八九式旋回固定機関銃実包並同擬製弾仮制式制定の件』昭和5年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001240600 
  4. ^ 陸軍省『九二式重機関銃仮制式制定の件』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C12121818000 
  5. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃弾薬九二式普通実包仮制式制定の件』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001317900 
  6. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃制式制定の件』昭和14年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001750800 
  7. ^ 陸軍技術本部第一部『昭和八年六月三十日軍需審議会に於ける応答事項』昭和8年」 アジア歴史資料センター Ref.C12121818200 
  8. ^ 銃砲課『九九式小銃外四点仮(準)制式制定及陸軍技術本部研究方針追加の件』昭和15年」 アジア歴史資料センター Ref.C01004909300 
  9. ^ 陸軍技術本部『九七式車載重機関銃弾薬仮制式制定の件』昭和12年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001625300 
  10. ^ 陸軍技術本部『九七式車載重機関銃仮制式制定の件』昭和12年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001630800 
  11. ^ 陸軍軍需審議会『弾薬統制要領規程の件』昭和14年」 アジア歴史資料センター Ref.C01004670200 
  12. ^ 陸軍技術本部『九二式重機関銃外一点弾薬中改正の件』昭和15年」 アジア歴史資料センター Ref.C01001857200 
  13. ^ 梅本弘 『ビルマ航空戦・上』 大日本絵画、2002年11月、p.344
  14. ^ 井川一久『日越関係発展の方途を探る研究 ヴェトナム独立戦争参加日本人―その実態と日越両国にとっての歴史的意味―』2006年、日本財団、42頁
  15. ^ 枪起机落:用步枪击落日寇飞机的八路军宋岭春中国中央電視台「科技博览」节目,2007年7月30日。
  16. ^ ポール・T. ギルクリスト「空母パイロット (新戦史シリーズ)」1992年、朝日ソノラマ
  17. ^ オア・ケリー「F/A-18の秘密 (新戦史シリーズ)」1992年、朝日ソノラマ
  18. ^ Walter, John (2006). Rifles of the World (3rd ed.). Iola, WI: Krause Publications. p. 33. ISBN 0-89689-241-7. https://books.google.com/books?id=Eq2Dnj4sDZIC&pg=PA33 
  19. ^ a b c 津野瀬光男『小火器読本』かや書房、1994年、91-93頁。ISBN 978-4906124060 
  20. ^ 伊藤眞吉「鉄砲の安全(その4)」『銃砲年鑑〈'10~'11〉』全日本狩猟倶楽部、2010年、117頁。ISBN 9784915426070 
  21. ^ 試製七.七粍歩兵銃 - 藤田兵器研究所
  22. ^ arisakatype99page - Carbines for Collectors.com
  23. ^ 試作一式テラ銃 - 25番
  24. ^ 小橋良夫『日本の秘密兵器(陸軍篇)』学習研究社、2002年
  25. ^ TAKI'S HOME PAGE IMPERIAL JAPANESE ARMY PAGE - Rifle
  26. ^ Experimental 99 Paratrooper Rifle - Military Surplus.com






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「九九式短小銃」の関連用語

九九式短小銃のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



九九式短小銃のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの九九式短小銃 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS