レーティッシュ鉄道Ge4/4 III形電気機関車
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同形機
同形機としてモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通[注釈 43]のGe4/4形とモントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道のGe4/4形が、準同形機としてアッペンツェル鉄道[注釈 44]のGe4/4形がある。
モルジュ-ビエール-コソネイ地域交通Ge4/4形
- モルジュ-ビエール-コソネイ地域交通の前身であるビエール-アプル-モルジュ鉄道[注釈 45]が1990年に発注したGe4/4形21-22号機は1993年に製造されたもので、電気方式がスイス国鉄と同じAC15kV16.7Hz、ブレーキ方式は列車用も空気ブレーキのみを装備である、ギヤ比が6.44で最高速度が75 km/hである、連結器が+GF+式連結器と標準軌貨車牽引用のねじ式連結器の2種を装備しているなどの差異がある。
- モルジュ-ビエール-コソネイ地域交通ではスイス国鉄に直通するロールボックに積載した標準軌の貨車による貨物列車およびビエールのスイス陸軍基地から有事の際に部隊を全国展開するための軍用列車を運行しており、本機はこれを牽引できるようレール面上1370 mmの位置にスイス国鉄仕様のねじ式連結器とバッファが取付けられ、台枠もこの部分まで嵩上げされているほか、通常の旅客列車牽引にも使用されている。塗装は黄緑色をベースに白で帯とBAMのロゴが入っている。
モントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道Ge4/4形
- モントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道のGe4/4形8001-8004号機は1995年にGDe4/4形電気機関車に続いて製造されたもので、電気方式がDC900 Vであり、集電容量が3000 Aに制限される関係で出力が2000 kWとなっているほか、主変換装置のインバータ部が1基で主電動機1台を制御している、電磁吸着ブレーキを装備するなど一部機器類が異なり、ギヤ比はレーティッシュ鉄道の機体とおなじ6.136で最高速度はこのシリーズの機関車本来の性能である120 km/hとされている。
- 製造当時の計画では、将来のツヴァイジンメンからBLS AGのインターラーケンまでの乗入れ[注釈 46]に備えてAC15kV16.7Hzとの2電源化が考慮されており、屋根上に交流用のパンタグラフおよび主開閉器の設置準備が、機器室内の主変換装置にコンバータ部の搭載準備がなされ、床下の主変圧器も筐体は搭載済みであるなどの交流機器の準備がされ、交流区間走行時にはレーティッシュ鉄道のGe4/4III形と同性能となる予定であった。
- そのほか、ブレーキ装置に電磁吸着ブレーキが追加されている、直流用のパンタグラフを搭載、最高速度が120km/hであるなどの差異がある。また、ロールボック牽引用に台枠はモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通の機体と同じく前部で嵩上げされているが、本機では専用のアダプターを使用しての牽引となるため、連結器は設置されていない。
- Ge4/4 8001、8004号機は2017年に連結器や前照灯の交換、機器類の更新などの更新改造を実施している。なお、残るGe4/4 8002、8003号機はレーティッシュ鉄道で運行される予定となっている。
アッペンツェル鉄道Ge4/4形
- アッペンツェル鉄道のGe4/4形1号機は1994年に製造された、レーティッシュ鉄道のGe4/4III形やモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通のGe4/4形をベースに小型化した機体で、電機部分、主電動機はABBが、台車はSLMが同様に製造しているが、車体はシュタッドラー[注釈 47]が製造しており、形態は大きく異なる。
- 車体は全長14850mmと短縮され、車体中央には幅1200 mmの扉を持つ面積5 m2荷物室が設置され、車体前後にはモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通の機体と同じく+GF+式連結器とロールボック積載貨車の牽引用のスイス国鉄仕様のねじ式連結器とバッファが取付けられていたが、アッペンツェル鉄道でのロールボックの運用が終了したため、2010年にねじ式とバッファは撤去されている。
- 台車はベースとなった機体と同一で、ギヤ比はモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通の機体と同じ6.44となっているほか、電気方式は直流1500 Vで、出力は設計上は1500 kWが可能であるが1000 kWに制限して使用され、37パーミルの勾配で200 tを35-40 km/hで牽引可能な性能を持つ。塗装は赤をベースに車体裾部と床下機器がダークグレー、屋根と屋根上機器がグレーであり、機体側面にABをデザインしたマークが入る。
注釈
- ^ Rhätischen Bahn(RhB)
- ^ DC2400Vから本線系統と同じAC11kV 16.7Hzに変更
- ^ 当初はGe4/4I形(製造当初より同線での使用が考慮されていた[1])の運転台改造機を使用する予定であったが、Ge4/4II形を使用することに変更されている[2]
- ^ Schweizerische Bundesbahnen(SBB)
- ^ Schweizerische Lokomotiv- und Maschinenfablik Winterthur
- ^ ABB Verkehrssysteme, Zürich
- ^ UIC形式名Re456形、スイス国鉄のSバーン牽引用片運転台機であるRe450形も車体等が異なるのみの準同型機である
- ^ Bodensee-Toggenburg-Bahn(BT)、2001年にスイス南東鉄道(Schweizerische Südostbahn(SOB))に統合
- ^ Sihltal Zürich Uetliberg Bahn(SZU)
- ^ Vereinigte Huttwil-Bahnen(VHB)、1997年にゾロトゥルン-ミュンスター鉄道(Solothurn-Münster-Bahn(SMB))、エメンタル-ブルクドルフ-トゥーン鉄道(Emmental-Burgdorf-Thun-Bahn(EBT))と統合してミッテルラント地域交通(Regionalverkehr Mittelland(RM))となり、その後2007年にBLSレッチュベルク鉄道(BLS Lötschbergbahn(BLS))と統合してBLS AGとなった
- ^ Chemin de fer Bière-Apples-Morges(BAM)、終点のビエールにスイス陸軍の基地があり、本鉄道が機材や物資等の輸送を行なっている
- ^ 1966年に直通運転や工事列車用としてGem4/4形電気/ディーゼル兼用機関車(DC1000 Vのベルニナ線では電気機関車で、AC11 kVの本線系統では電気式ディーゼル機関車で運転される)が導入され、2009年にはABe8/12 3501-3515形交直流電車が導入されている
- ^ レーティッシュ鉄道ではGe6/6II形や1990年代に導入が計画されたGe6/6III形といった、粘着力確保のため2車体縦方向連接としたBo'Bo'Boの電気機関車の事例がある[7]
- ^ 動輪とレールの粘着係数は0.08 - 0.45の範囲で変動するが、通常利用可能な値はドライでの0.39からウェットでの0.18(砂撒き装置使用により0.25 - 0.35)の間であり、 本形式では電子制御によりほぼ常時0.25以上とすることができると想定された[9]
- ^ 動軸2軸の中間に縦軸1軸を配置したA'1'A'で、動軸は左右に回転できる独立の1軸台車、縦軸は左右方向に可動するもので、曲線区間において中間の従台車が車体中心線に対して曲線の外側に変位するとリンク機構で接続された前後の動台車が曲線に合わせて転向する
- ^ Furka-Oberalp-Bahn(FO)、2003年にBVZツェルマット鉄道(BVZ Zermatt-Bahn(BVZ))と統合してマッターホルン・ゴッタルド鉄道(Matterhorn-Gotthard-Bahn(MGB))となった
- ^ Montreux Oberland bernois(MOB)
- ^ Gruyère-Fribourg-Morat(GFM)、2001年6月10日にフリブール公共交通(Transports Publics Fribourgeois(TPF))に統合される
- ^ オーストリア国鉄のブレンナー峠用2電源式1822形電気機関車も同一の台車(ライセンス生産品)を装荷している[16]
- ^ 私鉄用標準型機関車Re4/4形シリーズとスイス国鉄Re450形は半径300 mの曲線を80 km/hで走行が可能となっている
- ^ Chemin de fer Bière-Apples-Morges(BAM)
- ^ この2機のSLM製番はレーティッシュ鉄道が1989年に発注した6機と連番の5495-5496となっている
- ^ BB Daimler Benz Transportation
- ^ Georg Fisher/Sechéron
- ^ 最高温度200 ℃
- ^ SLM-Lenkshiebelager-antrieb
- ^ DIN17100による、JIS G3106のSM490YBに相当
- ^ DIN17100による、JIS G3101のSS400もしくはG3106のSM400A に相当
- ^ ABB Sécheron SA, Geneva、ABBグループにおけるスイス国内会社の一つ
- ^ DIN17100のAW-5454もしくはJIS H 4000のA5454に相当
- ^ オーストリア国鉄の1822形電気機関車やユーロトンネルシャトル用の9形電気機関車にもMICAS-S2が搭載されている[16][39]
- ^ Sécheron-Hasler AG、1989年にSAASの変圧器製造部門が分離してABB傘下に入ってABB Sécheronとなった後に残った、電力制御系機器の製造部門が1991年にHaslerRail AGと統合してSécheron Hasler Groupとなったもの
- ^ Tibram AG, Uetendorf
- ^ Bon Air Sweden AB, Mosjøen
- ^ 客車については1999年製のBDt 1751-1758形制御客車以降に真空制御空気ブレーキが装備されて、2006年以降従来の客車の真空制御空気ブレーキ化改造が実施され、2016年から運行を開始したABi 5701-5706形客車から空気ブレーキ装置を搭載している一方、貨車および歴史的車両は真空ブレーキのまま存億されるが、双方の混結は可能なシステムとなっている[51]
- ^ 1994年SLM/ABB製
- ^ クール - ライヒェナウ・タミンス間、ローテンブルネン - ローデルス・レアルタ間および、現在新設工事中の新アルブラトンネル内などでの120 km/h運転を想定している
- ^ Neues Eisenbahn-Verkehrs-Angebot
- ^ 予備車としてBDt 1751-1758形制御客車のうち空気ブレーキ装置を搭載したBDt 1751号車が用意されている
- ^ 捻出したABe8/12 3501-3515形はベルニナ線の線内運用に転用されている
- ^ Ge4/4I形は運用予備3運用・検査予備1運用、Ge6/6II形は運行1運用・運用予備3運用・検査予備2運用、Be4/4 511-516形は運用予備3運用・検査予備1運用となっている
- ^ クール・アローザ線用に同様の改造を実施し、2011-13年に廃車となったABt 1701-1702形、Bt 1703形の運転台機器を流用している
- ^ Transports de la région Morges–Bière–Cossonay(MBC)
- ^ Appenzeller Bahnen(AB)
- ^ Chemin de fer Bière-Apples-Morges(BAM)、2003年にモルジュ-ビエール-コソネイ地域交通へ改称
- ^ BLS AGの路線は1435 mm軌間であるため1000 mm軌間との三線軌条化がされる計画であったが、現在では軌間可変台車を使用した客車のみを直通させる計画が進んでおり、試作車が製造されている
- ^ Stadler AG, Bussnang
出典
- ^ a b c 『Das grosse Bush der Rhätische Bahn』 p.225
- ^ 『Das grosse Bush der Rhätische Bahn』 p.360-361
- ^ 『Rhätischen Bahn』 p.146-147
- ^ a b c d 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.319
- ^ 『Rhätischen Bahn』 p.148
- ^ a b 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.320
- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.34
- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.35
- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.33
- ^ a b 『Rhätischen Bahn』 p.147
- ^ a b c d e 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.45
- ^ 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.319-20
- ^ Ž. Filipovič (12/1979). “The Bo'Bo' Thyristor Lokomotives Class Ge 4/4 III of Furka-Oberalp Railway” (英語). Brown Boveri Review (BBC ): 778-787.
- ^ R. Hauser (12/1983). “Class GDe 4/4 Multi-Purpose, Main-Line Locomotives with DC Choppers of Chemin de fer Montreux-Oberland Bernois and Chemins de fer fribourgeois Gruyère-Fribourg-Morat for 840 V” (英語). Brown Boveri Review (BBC ): 500-509.
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- ^ Martin Gerber; Erwin Drabek; Roland Müller (10/1991). “Die Lokomotiven 2000 -Serie 460- der Schweizerischen Bundesbahnen” (ドイツ語). Schweizer Eisenbahn-Revue (Luzern: MINIREX): 321-377.
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- ^ a b c d 『Rhätischen Bahn: Stammnetz - Triebfahrzeuge』 p.139
- ^ a b 『Die Fahrzeuge der Rhätischen Bahn 1889-1998 band 3』 p.83
- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.18
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- ^ a b c d 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.325
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- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.20
- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.72-74
- ^ a b c 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.324
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- ^ a b 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.56
- ^ R. Treacy (5/1994). “Lokomotive "Le Shuttle" für den Eurotunnel” (ドイツ語). Elektrische Bahnen (R. Oldenbourg Verlag ): 131-141.
- ^ 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.325-328
- ^ a b 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.62
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- ^ 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.59-60
- ^ a b 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.60
- ^ a b 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.61
- ^ a b 『Gebbirgslok Ge4/4 III』 p.59
- ^ 『Die Lokomotiven Ge 4/4 III 641-649 der Rhätische Bahn』 p.331
- ^ a b 『Revision der Lokomotiven Ge 4/4III』 p.27
- ^ a b 『Refit Ge 4/4 III』 p.32
- ^ 『Bremsmigration』 p.14-15
- ^ a b c 『Umbau der MOB-Lokomotive』 p.10-11
- ^ a b 『Das grosse Bush der Rhätische Bahn』 p.237-238
- ^ 『Das grosse Bush der Rhätische Bahn』 p.238
- ^ 『Die Fahrzeuge der Rhätischen Bahn 1889-2000 band 4』 p.178-190
- ^ 『Neue Auffahrwagen für Vereina Schwerverkehr』 p.14
- ^ 『Lokdienste Sommer 2010 13.05.2010 bis 26.09.2010』
- ^ 『Lokdienste RhB Sommer 2019 Montag-Freitag 11.05.- 07.09.19』
- ^ 『Lokdienste RhB Sommer 2021 Montag-Freitag 09.05.- 29.10.21』
固有名詞の分類
スイスの電気機関車 |
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