ホンジュラス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 03:32 UTC 版)
国民
主な住民は、メスティーソが90%、 インディヘナが7%、黒人が2%、白人が1%となっており、圧倒的にメスティーソの多い国である。
先住民としては、かつてはコパン遺跡を築いたマヤ系の民族が多かったはずだが、現在は7つの公認された民族集団に分化し、特にカリブ海岸にミスキート族、レンカ族、黒人の影響のあるガリフナ族などの先住民がおり、ホンジュラスのミスキート族は隣国ニカラグアのミスキート族と連続した社会を形成している。
アフリカ系ホンジュラス人はおもにカリブ海岸の低地に居住しており、多くは西インド諸島から植民地時代に移入された奴隷の子孫である。19世紀には鉄道建設やプランテーションでの労働力としてジャマイカからの黒人労働者の移住も進んだ。
パレスチナ人、アラブ人、中国人、ベトナム人、日本人などの移住もあった。
1970年代の半ばから、多くのホンジュラス人が職を求めて海外に出て行ったため、ホンジュラス人の多くはメキシコ、ニカラグア、スペイン、カナダ、そして特にアメリカ合衆国に住む親戚を持っている。
言語
公用語はスペイン語であり、大多数の国民の母語である。そのほかにもカリブ海側の黒人や先住民によって英語やミスキート語、ガリフナ語などが話される。民族言語のおよその話者人口は、イスレーニョス(英語を話す)2.2万人、ミスキート語3.2万人、ガリフナ語2万人、ペチ語パヤ人1,500人、タワカ語のスモ875人、トル語のトルパン(ヒカケ)350人、レンカとチョルティはスペイン語話者となっている。スペイン語と先住民言語のに言語話者数は地域によりばらつきがある。一般的に男性に多く、それも若い世代に多い。また、2言語教育が行われる地域が増えてきた[34]。
宗教
宗教構成は、カトリック(94%)、プロテスタント・その他(各6%)である。
教育
2001年のセンサスによれば、15歳以上の国民の識字率は80%である[35]。
おもな高等教育機関としては、ホンジュラス国立自治大学(1847年)などが挙げられる。
治安
1990年ごろまでは中南米諸国の中では比較的安全な国とされていたが、1998年のハリケーン「ミッチ」の被害および上記の2009年軍事クーデターによる影響で失業者・貧困者が増加し、さらに麻薬組織による犯罪の増加もあり、治安は急激に悪化している。ホンジュラス国立暴力犯罪研究所の統計によれば、2012年の人口10万人あたりの殺人発生率は85.5と世界最悪の数値を記録している。特に北西部に位置するサン・ペドロ・スーラは「世界で最も危険な都市」であるとの呼び声が高く、2012年の統計で1,218件の殺人が報告されており、1日に3人は殺害されていることになる[36][37][38]。治安は徐々に回復しつつあるが、2018年時点で殺人による死者数は10万人あたり41人であり、依然として紛争国並みの数値を示している[39]。
ホンジュラスの凶悪犯罪の中心となっているのはマラスと呼ばれるギャングである。マラ・サルバトルチャ、エイティーンス・ストリート・ギャングなどが知られており、これらはホンジュラスでは、殺人・強盗・誘拐を起こすほか、組織間の銃撃戦により無関係の住民が巻き込まれることもある。元々はアメリカにいた中南米系の移民が結成したギャングであり、アメリカ国内の犯罪を理由に、アメリカ政府が母国に強制送還した者たちが起源である。今では世界的な犯罪組織となっており、合計で3万人ほどがギャングとして活動しており、うち1万人はアメリカにいる[40][41]。
2018年10月には、ホンジュラスから多数の移民希望者が陸路でアメリカ合衆国に向かうキャラバンが発生したが、参加者が移民を志す動機には貧困とともに犯罪の増加というものがあった[42]。同様のキャラバンは、2020年9月にも発生し、3000人以上が徒歩やヒッチハイクでアメリカを目指した[43]。
注釈
- ^ さまざまな儀式における聖なる飲み物として、またある種のカカオは交換の単位として使われた
- ^ 貴族や王族の頭飾りに使われた
- ^ 鈴や釣り針の原材料となった
- ^ テオティワカン人かもしくはその同盟者のマヤ人とも目される。
- ^ 中南米20カ国と2自治領で構成
- ^ パナマ市での会合で南米5カ国が提案し、賛成103、反対7、棄権3の圧倒多数で可決した。会議はクーデターの拒否、ホンジュラス国会の資格停止、11月29日の選挙の不承認で一致した。
- ^ 11月30日米アルトゥーロ・バレンスエラ国務次官補は選挙は国際的な基準を満たしているとし、結果を承認した。12月11日、クリントン国務長官は暫定政権が主導する大統領選挙の結果を承認すると改めて表明した。
出典
- ^ “Honduras” (英語). ザ・ワールド・ファクトブック. 2022年8月21日閲覧。
- ^ a b c d e “World Economic Outlook Database, October 2021” (英語). IMF (2021年10月). 2021年11月9日閲覧。
- ^ a b “Honduras#Government”. 中央情報局 (2022年2月11日). 2022年2月21日閲覧。
- ^ “Honduras”. Worldstatemen.org. 2022年2月21日閲覧。
- ^ “REPUBLICA DE HONDURAS CONSTITUCIÓN POLÍTICA DE 1982”. Political Database of the Americas (2011年1月20日). 2022年2月21日閲覧。
- ^ 桜井三枝子・中原篤史編集 『ホンジュラスを知るための60章』 エリアスタディーズ127 明石書店 2014年 ページ
- ^ “ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説”. コトバンク. 2018年1月28日閲覧。
- ^ 桜井・中原、2014、p.18
- ^ ダグラス・プレストン『猿神のロスト・シティ 地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ』NHK出版、2017年、262頁。ISBN 978-4-14-081716-2。
- ^ 桜井・中原、2014、p.66
- ^ 桜井・中原、2014、p.67
- ^ 桜井・中原、2014、p.52
- ^ 「堀義貴公使の中米5ヶ国着任(1935年)」外務省
- ^ ハリケーンで死者四千人 川に続々浮かぶ死体『朝日新聞』昭和49年(1974年)9月21日夕刊、3版、9面
- ^ 「死者は七千人に? ホンジュラスのハリケーン」『朝日新聞』昭和49年(1974年)9月22日朝刊、13版、23面
- ^ 桜井・中原、2014、p.25-26
- ^ 現職大統領、初の再選か ホンジュラス、開票続く日本経済新聞 2017年11月27日
- ^ ホンジュラス、国外追放の大統領が帰国 クーデター後初めてNIKKEI.NET 2009年9月21日
- ^ 野党候補が当確 ホンジュラスでクーデター政権下の大統領選 Archived 2009年12月3日, at the Wayback Machine.
- ^ 外務省 ホンジュラス 基礎データ
- ^ “ALBA加盟維持せよ”ホンジュラス 1万5000人がデモしんぶん赤旗2010年1月9日
- ^ ホンジュラス、地域の左派連合機構から脱退へ 日本経済新聞
- ^ ホンジュラス:セラヤ氏任期切れで亡命、ロボ氏大統領就任 2010年1月28日 毎日新聞
- ^ 中米ホンジュラスで非常事態宣言、大統領選後の暴力デモで AFP(2017年12月3日)2017年12月23日閲覧
- ^ 中国、ホンジュラスと台湾の断交方針報道に「歓迎」 - 産経ニュース 2023年3月25日
- ^ ホンジュラス外相、訪中へ 国交樹立協議 台湾は「強烈な不満」 - 毎日新聞 2023年3月23日
- ^ ホンジュラスと台湾、断交を発表 「経済再建」で中国と国交樹立 - 毎日新聞 2023年3月26日
- ^ 内閣府による県民経済計算 (PDF) [リンク切れ]
- ^ a b c d e f 桜井・中原、2014、p.20
- ^ 桜井・中原、2014、p.21
- ^ 桜井・中原、2014、p.14-15
- ^ 桜井・中原、2014、p.15
- ^ 桜井・中原、2014、p.17
- ^ 桜井・中原、2014、p.26
- ^ CIA The World Factbook - Honduras CIA 2009年3月30日閲覧
- ^ 外務省 海外安全ホームページ 安全対策基礎データ ホンジュラス 2013年10月18日 2014年12月22日閲覧
- ^ "The most dangerous place on earth? San Pedro Sula in Honduras - where three people are murdered EVERY DAY - tops list of the world's most violent cities" MailOnline 2014年12月22日閲覧
- ^ "Inside San Pedro Sula – the most violent city in the world " TheGuardian 2014年12月22日閲覧
- ^ “ホンジュラスの刑務所で衝突、収容者18人死亡 ギャングの抗争か”. AFP (2019年12月22日). 2019年12月22日閲覧。
- ^ “ケダモノと呼ばれる「MS13」…米政権のリアルな「敵」”. 産経新聞. (2018年6月12日) 2024年2月19日閲覧。
- ^ “壁に「ギャングの縄張り」 暴力に苦しむ治安最悪レベルの国は今”. 毎日新聞. (2023年7月16日) 2024年2月19日閲覧。
- ^ “中米ホンジュラスの移民集団、メキシコ南部国境に到達”. CNN (2018年10月21日). 2018年10月27日閲覧。
- ^ “米国へ向かうキャラバン、移民3000人がグアテマラ入り”. AFP (2020年10月2日). 2020年10月2日閲覧。
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