デンタルインプラント
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歴史
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失った歯を人工材料で補う試みは古くから行われてきた。上顎骨に鉄製のインプラントが埋まった紀元2世紀から3世紀の古代ローマ時代の人骨が発見されており、このことはすでにインプラント治療が試みられていたことを示している。7世紀のマヤ文明の遺跡で発掘された 20歳代女性の下顎骨に天然の抜去歯2本と貝でできたインプラントが埋まっており[1]、歯石がついている事、周囲に骨造成がエックス線検査で確認できる事[1]からかなり長期に機能した事を示しており世界で最初の実用 に耐えたインプラントだと考えられている。
インプラントが臨床に登場したのは1910年代。1913年にグリーンフィールドが円筒型のインプラントを開発し、これが近代インプラントの祖と評される事が多い[1]。1930年代にはスクリュー型、1940年代にはらせん型のインプラントが考案された。しかし予後は著しく悪かった。インプラント治療最大のブレークスルーと言われるのが 1952年スウェーデンのルンド大学で研究を行っていたペル・イングヴァール・ブローネマルク教授によって[2]、チタンが骨と結合すること(オッセオインテグレーション)が発見され、チタンがインプラントに応用されるようになった事。これによりしっかりと骨に結合するインプラント治療が可能になった。動物実験を経て、1962年から人間に本格的にインプラント治療が行われるようになった。ただ、ブローネマルク教授が歯科医師ではなかった事などがあり、批判的な立場の歯科医師も多く普及には至らなかった。1978年に初のデンタルインプラントのコンセンサス会議が、ハーバード大学とアメリカ国立衛生研究所の共催で開催された[3]。この会議はデンタルインプラントのデータ収集と分析の評価基準と標準が確立された象徴的な会議であったと評価されている[3]。大きな ターニングポイントとなったのは1982年のトロント会議。そこで予後15年の症例が報告され、一大センセーショナルを巻き起こし、北米を中心に普及が始まった[3]。インプラントの形態は大 きく分けてブレードタイプと呼ばれる板状のものとルートフォームと呼ばれる歯根様のタイプがあるがルートフォームが主流になり現在に至る。ルートフォームは当初はシリンダータイプと呼ばれる滑らかな表面だったが、ネジ状の形態の方が初期固定に有利とわかり、現在のインプラントにはネジ山(スレッド)がつくタイプになっている。 さらに骨との結合を早期かつ強固にするため、フィクスチャー部にHA(ハイドロキシアパタイト)をコーティングしたインプラントが登場した。HA は生体の成分と同様の成分を有し、骨形成において骨誘導能(バイオインテグレーション)が期待できる。HAではインプラント周囲1.5㎜まで骨ができるのに対し、チタンでは周囲0.3㎜が限界であるとの実験結果もある。日本でも1990年代に入りさまざまな製法が開発され、特に再結晶化HAをコーティングしたインプラントでは100%近い結晶度を実現。現在では早期のインテグレーションが得られるインプラントとして、広く臨床に応用されるようになっている。その他。また1991年に表面が機械研磨(いわゆる削りだしの状態)より強酸で表面処理をした方が骨との結合がより強くなるという論文が発表され、それ以降各社表面をブラストや強酸により処理しラフサーフェス(微小粗雑構造)を作るようになり表面性状の良さを競っている。現在さらに表面をフッ素コーティングをする事により骨伝導と石灰化が惹起され、治癒が早まると注目されている[4]。まだ認可されていないが数年のうちに日本でもフッ素コーティングタイプのインプラントが登場する事が予想される。このようなインプラントの改良により予後は日々向上している。また適応も骨再生誘導療法などが開発され、歯槽骨の再生により拡大している。2005年には、ジルコニアアバットメントが日本国内で薬事法上の認可を受け[5]臨床応用が始まり審美的治療の幅も広がっている。
- ^ a b c d 畑好昭「今と昔のインプラント」『明倫歯科保健技工学雑誌』第11巻第1号、明倫短期大学、新潟県新潟市、2008年3月、3-8頁。
- ^ 朝倉 2017, p. 84・85.
- ^ a b c Shulman, LB; Driskell, TD: Dental Implants: A Historical Perspective. In Block, M; Kent, J; Guerra, L, editors: Implants in Dentistry. Philadelphia: W.B. Saunders, 1997. page 2.
- ^ “Bone healing at implants with a fluoride-modified surface: an experimental study in dogs.”
- ^ デンツプライ三金 (2008年3月13日改訂). “セルコンアバットメント(フリアデントセルコンアバットメント)”. 医薬品医療機器総合機構. 2010年3月10日閲覧。
- ^ 色川裕士、佐藤孝 弘、藤井規孝、橋本明彦、野村修一「当科における過去5年間のインプラント治療の臨床統計的検討」『新潟歯学会誌』第32巻第2号、新潟歯学会、新潟市中央区、2002年12月、285-289頁、ISSN 0385-0153、2010年3月9日閲覧。
- ^ 、神村正人、木村瞳、田 代教二、山田俊介、大森佳二、大坪由佳、山田勝己、城戸寛史、高橋裕、佐藤博信、松浦正朗「高齢者に対するインプラント治療の現状について」『日本口腔インプラント学会誌』第19巻、日本口腔インプラント学会、東京都港区、2006年、349頁。
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- ^ a b c 鶴巻浩「70歳以上の高齢者における歯科インプラント治療についての実態調査」『日本口腔インプラント学会誌』第22巻、日本口腔インプラント学会、東京都港、2009年9月、330-337頁、ISSN 0914-6695。
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- ^ PICONI,C MACCAURO,G (1999). “Zirconia as a ceramic ciomaterial”. Biomaterials 20: 1-25.
- ^ a b 「インプラントの咬合」保母 須弥也、細山 愃 著 クインテッセンス出版 ISBN 978-4874179338
- ^ a b インプラントの咬合、保母 須弥也著、ISBN 978-4874179338
- ^ アールアンドディ偏。歯科機器・用品年鑑:2008年度版
- ^ MOrris HF,Ochi S Hydroxyapatite-coated implants:a case for their use.J Oral Maxillofaf Surg 1998;56;1303-1311
- ^ a b 堤厚二・永山正人・富田達洋・三島顕・賀来亨「歯石様石灰化物の付着を認めたHAコーティングインプラントの撤去症例について」『日本口腔インプラント学会誌』第14巻、日本口腔インプラント学会、東京都港区、2001年、461-469頁。
- ^ 虫歯の人が妄信してしまう危険な歯科医5例 インプラントが「骨を突き抜ける」ケースも 東洋経済オンライン 2018年8月19日
- ^ インプラントにも歯周病 速い進行、気付かぬことも 47news 2012年6月5日
- ^ 「ワンピース型」インプラントのリスク、顎骨壊死や神経症も NEWSポストセブン 2018年8月18日
- ^ 硬組織のみ切削
- ^ 『インプラントを支台としたカンチレバーの10年後の調査』 Curtis M Becker「Quintessence International」 6/2004
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