デンタルインプラント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 21:05 UTC 版)
課題
- 医師による技術差
- また、歯科医師の過剰および政府による診療報酬削減により、新しくインプラント治療を始める歯科医師も多く、手術の技術、経験、経過観察などのレベル差が大きいといったことがある。
- 危険
- 多量出血・後遺症・死亡事故が発生している。主に、フィクスチャー部を顎骨に埋める為に行う手術に伴う。医師の未熟さや不注意による手術計画(事前の検診を含む)に問題があったり、手術時のミスを原因とする。
- 治療期間の短縮
- 現代医学におけるMI (Minimal Intervention) を実現するためには、治療期間の短縮が望まれ、HAコーティングインプラントの骨誘導などによる早期治癒がクローズアップされるなど、インプラントメーカーにおいては治療期間の短縮にしのぎを削っている。次いで、骨の再生や増生は可能であるが、インプラント周囲に歯根膜を再生させることは出来ない。この歯根膜がインプラントに存在しないことが、天然歯と比べた時の大きな相違点である。歯根膜は噛む力の感知の役割を果たす感覚器でもあり、歯根膜のないインプラントは、咬合機能圧に対する反応が天然歯とは異なると報告されている。天然歯とインプラントを長期に並存させようとする場合に不具合が生じることがありうる。
器具
- 骨切削器具
顎骨へのドリリングに際し、ドリルを使用すると#課題のような危険があるだけではなく、摩擦による組織への摩擦熱を与えて予後を悪くする原因となる。「ピエゾ・エレクトリック・デバイス」のように、血管や神経を切断する事[20]や摩擦熱を与えない器具も使用されている。
応用
インプラントは単独での埋入に加えて下記にあげる用い方もある。
- ボーンアンカードブリッジ - 下顎で5〜6本、上顎で6〜8本のインプラントを用い、セメント等で上部構造を連結固定するブリッジ形態の補綴方法。4本ですべておこなうものを特にall on 4(後述)と呼び近年症例が増え ている
- all on 4 - 無歯顎患者に対し、4本のフィクスチャーで片顎すべての補綴を完了する方法。比較的新しい概念であり、エビデンスならびに臨床データに乏しい。
- カンチレバー - 上顎洞への近接等インプラントが難しい部位に対し延長ブリッジ(片持梁)の形で上部構造を作成し補綴する方法。インプラントの寿命が短くなると言う意見もあるが通常の埋入と比較して予後に有意差はないという報告もある[21]。
- ミニインプラント - 矯正のアンカーとして用いる補綴目的ではない小さな径のインプラント。直径2mm前後(通常のインプラントは3〜5mm前後)。頬側に打ち大臼歯の遠心移動、口蓋に打ち大臼歯部の圧下のそれぞれ固定源として用いる。
- インプラントを支台にしたオーバーデンチャー - 数本のインプラントを支台にし、それの維持力で義歯を固定するもの。下顎で骨吸収が進み義歯が安定させられない際などに有効。
- インプラントによるブリッジ - 埋入本数を減らす目的、また上顎洞への近接等インプラントが難しい部位を外す目的でインプラントを支台にしたブリッジをおこなう。天然歯との連結、ブリッジは近年の知見では禁忌であるがインプラント同士であれば問題ないとされる。
種類
インプラントは世界に100〜200種類が存在すると言われている。
日本で主に臨床で使われている代表的なものを以下に記す。
- ノーベルバイオケア社
- ブローネマルク - 歴史が長く信頼性が高い。エキスターナルコネクトの代表。
- リプレイスセレクト - 旧ステリオス社製のインプラントでノーベルバイオケア社がステリオス社を吸収したことによりリプレイスというブランドとなった。その後、インプラントのインターフェイスの潮流が、エキスターナルコネクトからインターナルコネクトへと変わり、リプレイスセレクトが開発された。
- ノーベルダイレクト - 一回法のインプラント。ワンピースインプラント。
- アストラテック社(デンツプライIHグループ)
- アストラテックインプラント - インプラントメーカーとしては後発であるが、その特徴である「インターナルコネクト」「コネクティブカウンター」は他社が追従している。また、その他の特徴である「マイクロスレッド」により辺縁骨の吸収が少なく、「インターナルスリップジョイント」により、2次オペなどの術式が簡便。
- ストローマン
- ITIインプラント - 歴史が長く、症例数が多いインプラント。
- ジンマーデンタル社(整形外科ジンマー社のデンタル部門)
- スクリューベント - 2回法のインプラント。MTXブラスト処理タイプと(HA)コーティングタイプがある。
- スイスプラス - 1回法のインプラント
- カルシテックインプラント - ハイドロキシアパタイト(HA)コーティングのインプラント。
- デンツプライ フリアデント社
- ザイブ - ドイツ製のインプラント。フィクスチャーにテーパーがあり、ネック部と根尖部の2箇所で初期固定が得られるようになっている。
- アンキロス
- フリアリット2
- ブレーンベース社
- MYTIS Arrow -日本製のインプラント。 アメリカFDAを取得し、日本国内だけではなくアジア欧米20ヶ国以上に輸出しているインプラント。独自の開発力で吸収性歯科用骨再建インプラント材を国産初となる厚労省認可を取得している。
- 京セラメディカル(京セラと神戸製鋼所それぞれの医療材料部門の統合によって設立)
- POI - 国産インプラントとしては歴史が長い。表面に陽極酸化処理を施したタイプとHAコーティングタイプがある。
- POI EX - POIのフルモデルチェンジ版
- プラトン社
- プラトンバイオ - 日本製のインプラント。HAコーティングがされている。
- アドバンス社
- AQB - 日本製のインプラント。HAコーティングがされている。
- サイブロンデンタル社
- エンドポア - エンドポア社を買収したブランド。フィクスチャー表面が独特の表面形状をしている。
- PITT-EASY - ドイツのオラルトロニクス社を買収したブランド。HAコートタイプも揃える。
- サイブロンPRO
- ^ a b c d 畑好昭「今と昔のインプラント」『明倫歯科保健技工学雑誌』第11巻第1号、明倫短期大学、新潟県新潟市、2008年3月、3-8頁。
- ^ 朝倉 2017, p. 84・85.
- ^ a b c Shulman, LB; Driskell, TD: Dental Implants: A Historical Perspective. In Block, M; Kent, J; Guerra, L, editors: Implants in Dentistry. Philadelphia: W.B. Saunders, 1997. page 2.
- ^ “Bone healing at implants with a fluoride-modified surface: an experimental study in dogs.”
- ^ デンツプライ三金 (2008年3月13日改訂). “セルコンアバットメント(フリアデントセルコンアバットメント)”. 医薬品医療機器総合機構. 2010年3月10日閲覧。
- ^ 色川裕士、佐藤孝 弘、藤井規孝、橋本明彦、野村修一「当科における過去5年間のインプラント治療の臨床統計的検討」『新潟歯学会誌』第32巻第2号、新潟歯学会、新潟市中央区、2002年12月、285-289頁、ISSN 0385-0153、2010年3月9日閲覧。
- ^ 、神村正人、木村瞳、田 代教二、山田俊介、大森佳二、大坪由佳、山田勝己、城戸寛史、高橋裕、佐藤博信、松浦正朗「高齢者に対するインプラント治療の現状について」『日本口腔インプラント学会誌』第19巻、日本口腔インプラント学会、東京都港区、2006年、349頁。
- ^ a b 、ENGFORS、ORTORP (2002). “Fixd implant-supported prostheses in elderly patient :A-5 year prospective study”. Clin.Implant.Dent.Relat.Res 6: 97-102.
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- ^ a b 「インプラントの咬合」保母 須弥也、細山 愃 著 クインテッセンス出版 ISBN 978-4874179338
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- ^ アールアンドディ偏。歯科機器・用品年鑑:2008年度版
- ^ MOrris HF,Ochi S Hydroxyapatite-coated implants:a case for their use.J Oral Maxillofaf Surg 1998;56;1303-1311
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- ^ 虫歯の人が妄信してしまう危険な歯科医5例 インプラントが「骨を突き抜ける」ケースも 東洋経済オンライン 2018年8月19日
- ^ インプラントにも歯周病 速い進行、気付かぬことも 47news 2012年6月5日
- ^ 「ワンピース型」インプラントのリスク、顎骨壊死や神経症も NEWSポストセブン 2018年8月18日
- ^ 硬組織のみ切削
- ^ 『インプラントを支台としたカンチレバーの10年後の調査』 Curtis M Becker「Quintessence International」 6/2004
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