コンテナ船 分類

コンテナ船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 05:55 UTC 版)

分類

コンテナ輸送専用船をフルコンテナー、在来の貨物船の形態とコンテナ設備を併設するものはセミコンテナーという[1]。貨物コンテナと他の一般貨物を混載する混載貨物船には、貨物コンテナ専用の船艙を持つ「分載型」と、専用の船艙を持たずに同一スペースを共用して搭載する「混載型」がある。

冷凍コンテナへの給電設備が多くの船に備わっており、一部の船では水冷の配管設備を船艙深部にまで備えている。また、冷凍ユニットの運転状況を監視する装置が備わっている船もある。

輸送と荷役

アメリカン・プレジデント・ラインズのコンテナ船
香港のコンテナ用はしけ

コンテナは規格化されているため、天候に関係なく機械化された荷役が可能で、積付や陸揚もコンピュータで迅速に行うことができる[1]

コンテナ船は国際間の貨物輸送の主要な輸送手段として、日用品、工業製品、精密機器、加工済み食品、製材済みの木材や金属インゴットのような原材料などドライカーゴと呼ばれる物のほとんどを運んでいる。冷凍食品も冷凍コンテナによって運搬される。

コンテナ船での輸送に不適なものに、バラ積みやタンク輸送に適した貨物や、高速・短時間で運搬しなければならないものがある。

  • ばら積み貨物:鉱石石炭穀物などは、それぞれ鉱石運搬船、石炭運搬船、穀物運搬船等の専用運搬船、またはそれらの共用運搬船といったばら積み貨物船で運ばれる。
  • 石油類やLNG、LPG:それぞれ専用のタンカー(油槽船)で運ばれる。
  • 高い鮮度が求められる生鮮食料品や高額な半導体製品、航空郵便物は航空貨物として運ばれる。

TEU

コンテナ船の積載能力はTEUという単位で表現され、ISOによって規格化され海運業界の標準となっている20フィートコンテナの1個分に相当する。例えば 4,000TEUであれば、20フィートコンテナを4,000個積める大きさの船ということになる。

コンテナライゼーション

貨物輸送を全てコンテナを使って行うことをコンテナライゼーション(containerization)という。コンテナは商業貨物の輸送方法として最も一般的手段となっており、陸上ではセミトレーラ貨物列車で運ばれ、海上ではコンテナ船に運ばれ、工場から店舗倉庫などへ一貫輸送されている。

航路

フィーダー航路を行くフィーダー船。大型コンテナ船と比べると小さい

コンテナ船には、設備が整った世界各地の基幹港湾ハブ港)だけを結び深い海路を進む大型船と、ハブ港から地方港湾を結ぶフィーダー路線を進む小型船とがある。

世界の大型ハブ港湾にはロッテルダムコペンハーゲンシアトルオークランドロサンゼルスシンガポール香港上海高雄釜山などがあり、日本の地方港湾は釜山や上海からの支線が延びるフィーダー港湾に当たる。

世界各国の代表的な港湾や、横浜港神戸港など日本のスーパー中枢港湾は、超大型コンテナ船が立ち寄るハブ港から外されないよう、大型投資や制度改善、国内外の集荷力強化などを進めている。

港別のコンテナ取扱量

世界の海上貨物コンテナの取扱量を港湾ごとに見ると、2008年の統計では中国の港が20位までに8港も入っている。上位の8位まではすべてアジアの港である。日本の港は2008年で東京が24位で横浜が30位となっている。1970年代神戸ロッテルダムが世界のトップであったことを考えれば、産業構造の変化が進んでいることがわかる。中国でも、特に上海港の伸びが著しく、後背地での生産や消費の激増と洋山深水港の開港などにより取扱量が増え、シンガポールや香港を抜いて1位となった。

世界の主要コンテナ港湾トップ20(2016年)[2][注釈 1][3][4]
2016年
順位
2015年
順位
港湾名 取扱量
単位:百万TEU
増減率
1 1 上海 中華人民共和国 37.13 1.6 %
2 2 シンガポール シンガポール 30.90 -0.1 %
3 3 深圳 中華人民共和国 23.97 -1.0 %
4 4 寧波舟山 中華人民共和国 21.60 4.7 %
5 6 釜山 大韓民国 19.85 2.1 %
6 5 香港 香港(中華人民共和国) 19.81 -1.3 %
7 8 広州 中華人民共和国 18.85 9.5 %
8 7 青島 中華人民共和国 18.01 3.1 %
9 7 ジュベル・アリ ドバイアラブ首長国連邦 15.73 0.8 %
10 10 天津 中華人民共和国 14.49 2.7 %
11 12 ポート・クラン マレーシア 13.20 11.0 %
12 11 ロッテルダム オランダ 12.38 1.2 %
13 14 高雄 台湾中華民国 10.46 1.9 %
14 13 アントワープ ベルギー 10.04 4.0 %
15 15 大連 中華人民共和国 9.61 1.7 %
16 16 厦門 中華人民共和国 9.61 4.7 %
17 18 ハンブルク ドイツ 8.91 1.0 %
18 19 ロサンゼルス アメリカ合衆国 8.86 8.6 %
19 17 タンジュンペラパス マレーシア 8.28 -9.0 %
20 20 京浜(東京港横浜港川崎港 日本 7.61 1.2 %
シンガポール港のコンテナターミナル。

注釈

  1. ^ 2013年順位。1位上海3362 TEU、2位シンガポール3224、3位深圳2328、4位香港2235、5位釜山1769、6位寧波1735、7位青島1552、8位広州1531、7位ドバイ1364、8位天津1301、9位ロッテルダム1162、10位大連1086、11位ポート・クラン(マレーシア)1035、12位高雄994、13位ハンブルク930。28位東京486、横浜289
  2. ^ 傘下に WEC Lines
  3. ^ 傘下に P&O Nedlloyd, Safmarine, SeaLand , Hamburg Süd
  4. ^ 傘下に APL, Neptune Orient Lines, ANL, Comanav, CNC Line, Mercosul Line, and Containerships
  5. ^ 傘下に COSCO Shipping Lines (COSCO), China Shipping Container Lines (China Shipping Group), OOCL (東方海外貨櫃航運公司), Shanghai Pan Asia Shipping, New Golden Sea Shipping, Coheung
  6. ^ 傘下に United Arab Shipping Company, CSAV , NileDutch
  7. ^ 傘下に 日本郵船,商船三井, 川崎汽船
  8. ^ 傘下に Italia Marittima , Uniglory Marine
  9. ^ 傘下に Advance Container Line (ACL), Pacific Direct Line (PDL), Mariana Express Lines Ltd. (MELL)
  10. ^ 傘下に Islamic Republic of Iran Shipping Lines, HDS Lines, Valfajre Eight Shipping Company, Khazar Shipping Company
  11. ^ 傘下に Consortium and X-Press Container Line

出典

  1. ^ a b 池田勝, 「古今(こきん)用語撰」『らん:纜』 1992年 17巻 p.43-46, doi:10.14856/ran.17.0_43、2020年6月19日閲覧。
  2. ^ [Top 50 World Container Ports World Shipping Council]2018年8月30日閲覧
  3. ^ 1995年順位 1位香港1254、2位シンガポール1185、3位ロッテルダム479、4位高雄523、5位釜山450、6位ハンブルク289、7位横浜276
  4. ^ 「海上物流、主役は中国」日本経済新聞2015年4月27日朝刊9面。出典は「世界のコンテナ輸送と就航状況 2014年版」(日本郵船編。日本海運集会所発行)
  5. ^ a b c d e 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4-425-71371-0
  6. ^ 全長400m 世界最大級コンテナ船が明石海峡に”. 神戸新聞NEXT (2019年3月18日). 2019年6月16日閲覧。
  7. ^ Table 3.1. Container freight markets and rates”. Review of Maritime Transport. 国際連合貿易開発会議. p. 58 (2015年10月14日). 2015年10月閲覧。
  8. ^ PublicTop100”. alphaliner.axsmarine.com. 2022年4月14日閲覧。
  9. ^ 今治造船株式会社 会社概要”. IMABARI SHIPBUILDING CO.,LTD.. 2023年8月17日閲覧。
  10. ^ 韓進重工、世界最大級のコンテナ船を竣工”. nna.ASIA (2018年1月29日). 2018年11月18日閲覧。






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