カラビニエリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/28 03:09 UTC 版)
概要
陸軍、海軍、空軍と並びイタリア軍を構成する4軍のひとつ。単純に「軍(l'Arma)」と呼称される事もある。
治安維持機関でもあり、平時にはイタリアの警察機構の一部として、国家警察(Polizia di Stato)や財務警察(Guardia di Finanza)などとともに警察活動を行う。有事には憲兵および戦闘部隊として機能する。人員は約11万名。
名称
カラビニエリは元来「騎兵隊」と言う意味である(「騎兵銃」や「騎銃」と訳されるカービン銃と同じ語源を持つ)。
王政時代にCorpo dei Carabinieri Realiとして設立され、その後にArma dei Carabinieri Realiと改称された。共和政移行後、現在の名称となった。日本語では単にカラビニエリと呼ばれる。英語でもカラビニエリとそのまま呼ばれるが、あえて訳せば「Carabineers」となる。
Arma dei Carabinieriは、日本語では「国家治安警察隊」、他に「警察軍」、「憲兵隊」、「軍警察」などとも訳される。
沿革
カラビニエリは元来1814年にピエモンテ州に於いて、サルデーニャ王国国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ1世により設立されたのが興りである。
カラビニエリは騎兵隊と言う意味である。これはフランス王国の憲兵隊(後のフランス国家憲兵隊)を模範とした先鋭部隊であり、それまでは事実上警察としての機能を果たしていた「サルデーニャ竜騎兵隊(Dragoni di Sardegna)」に代わるものだった。
カラビニエリは19世紀のイタリア王国統一の過程で、警察組織としてだけではなく戦闘組織としても重要な役割を果たした。第一次世界大戦と第二次世界大戦の緒戦に於いても活躍し多くの勲章を授与されたが、代償として多くの戦死傷者を出している。
第二次世界大戦後のイタリアでは、極左、マフィア、ネオファシストによる暴力行為やテロリズムを鎮圧する治安維持作戦の最前線で活躍している。冷戦時代には赤い旅団を筆頭とする対極左テロリスト作戦である「鉛の時代」や第二次マフィア戦争に従事した。
2016年、森林警備隊が解隊され、隊員は全てカラビニエリ隷下の森林・環境・農業保護部隊(Comando unità per la tutela forestale, ambientale e agroalimentare)として吸収された。
任務
一般の警察と同等の機能と軍隊としての機能とを併有している。組織管理面において国防省の傘下にあり、軍事任務については国防省の指揮を受ける。警察任務については内務省、環境保護や在外公館の保護などその他の任務については、関連省庁の指揮を受ける。駐日イタリア大使館にも常駐している。
対テロ
対テロおよびHRT用の特殊部隊として特殊介入部隊 (GIS:Gruppi di Intervento Speciale)がある。GISは国外にも派遣され、先のイラク戦争においても対テロ作戦に従事している。同様の任務にある部隊として他に内務省・国家警察の治安作戦中央部隊(NOCS)がある。
PKO
イタリア共和国は、海外での平和維持活動(PKO)にも積極的にカラビニエリを派遣しており、主として当時ユーゴスラビア(現在のセルビア)のコソボ(コソボ・メトヒヤ自治州)、アフガニスタン、イラク等で活動を展開させている。2003年のイラク駐留ではテロ攻撃によって19人の隊員が殉職している。
美術品保護
主な活動の一つとして、イタリア国内の美術品の保護も行っている。カラビニエリの一部署である美術遺産保護部隊(Nucleo Tutela Patrimonio Artistico)は、イタリアの財産である美術品・工芸品を保護する活動を専門に行っている。イタリア美術に関する主な活動は、第二次世界大戦後の混乱に乗じた美術品の盗難や密売に対する取り締まりから始まり、現在でも特別な訓練を受けた人員を使った美術品保護―主として密輸出取締や窃盗事件捜査は、内外から高い評価を受けている。
その他
カラビニエリのコラッツィエリ (Corazzieri)は騎馬部隊であり、イタリア共和国大統領の儀典警護も行っている。また、その他軍事機密の保持、軍事施設の警備等も重要な任務である。その軍律、専門技術などは国民からも高い評価を受けていると言われる。
- カラビニエリのページへのリンク