オスカー型原子力潜水艦 オスカー型原子力潜水艦の概要

オスカー型原子力潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 06:27 UTC 版)

949型潜水艦 (オスカー型)
基本情報
艦種 巡航ミサイル原子力潜水艦 (SSGN)
同型艦 13隻
前級 670M型(チャーリーII型)
次級 885型(ヤーセン型)
要目
排水量 (949型)
水上: 12,500t 水中: 16,500t
(949A型)
水上: 14,700t 水中: 19,400t
全長 144m (949型)
155m (949A型)
184m(09852型)[1]
最大幅 18.2m
吃水 9.2m
機関方式 OK-650M加圧水型原子炉×2基
蒸気タービン×2基
スクリュープロペラ×2軸
出力 100,000馬力
速力 水上: 15kt 水中: 32kt
航続距離 120日間連続潜航可能
潜航深度 安全: 520m
最大: 600m
乗員 90名
兵装 650mm魚雷発射管×2門 (魚雷8本)
533mm魚雷発射管×4門 (魚雷16本)
P-700対艦ミサイル×24発
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概要

原型のオスカーIと、改良型のオスカーIIがある。ソ連海軍での正式名は、原型が949型潜水艦ロシア語: Подводные лодки проекта 949)、改良型が949A型潜水艦ロシア語: Подводные лодки проекта 949А)であった。また計画名は、原型が「グラニート」(Гранит)、改良型が「アンテーイ」(Антей)であった[2]

ソ連海軍第3世代の巡航ミサイル原潜(SSGN)であり、大射程のP-700「グラニート」(SS-N-19「シップレック」)対艦ミサイルを24発という極めて強力な対水上打撃力を備えている。ただしこのために対水上打撃任務の原潜としては異例の大型艦となり、後継の885型(ヤーセン型)は攻撃原潜(SSN)と兼任の比較的小型の艦とされて、対水上打撃専任のSSGNとしては、今のところ本型が最後となっている。

来歴

1960年代初頭、ソ連海軍初の対水上打撃任務のSSGNとして675型潜水艦(エコーII型)が運用を開始したものの、その主兵装であるP-6(SS-N-3A/B「シャドック」)対艦ミサイルは水中発射に対応しておらず、発射前後のかなりの間、浮上を余儀なくされた。このことから、第2世代のSSGNとして設計された670型潜水艦(チャーリーI型)では水中発射に対応したP-70「アメチースト」(SS-N-7「スターブライト」)とされたが射程は短く、続く670M型潜水艦(チャーリーII型)では射程を延伸したP-120「マラヒート」(SS-N-9「サイレン」)を搭載したものの、その射程は依然として、西側の空母機動部隊の300km以上と目される制圧範囲に対して過小であった[3]

このことから、1960年代から1970年代にかけて、海軍は、空母を1発で撃破可能な長射程ミサイルの開発を要求した。莫大な予算が投入され、設計局の活動が制約されなかったことから、このミサイルの規模は拡大を重ね、信じがたいほどの巨体となった。1969年には、P-6、70、120と潜水艦用対艦ミサイルの開発を手がけてきた第52設計局(OKB-52)において、P-700「グラニート」(SS-N-19「シップレック」)の設計室が開設された[3]

また1967年には、第18中央設計局において第3世代SSGNの予備設計が開始され、1969年には、海軍より正式に、「949型ミサイル重潜水巡洋艦」の設計依頼がなされた。主任設計官としてはプスチンチェフ設計官が任命されたが、1977年に死去したことからバラノフが跡を継いだ[2]

設計

949型(オスカーI型)のイメージ図。
 
949A型(オスカーII型)のイメージ図。

本型は、大型・大射程のP-700対艦ミサイル24発およびその関連設備を搭載する必要上、水中排水量15,000トン以上という、攻撃潜水艦としては異例の巨艦となっている。これらのミサイルの発射筒は、670型・670M型と同様に外殻と内殻の間に配置されたが、船体構造は全面的に複殻式となって抗堪性も向上し、艦内区画は9つ、予備浮力は32%を確保した[2]

また排水量増大の一因として、居住性の改善も挙げられている。長期間の作戦行動を維持するため、スポーツ・ルームの設置など乗員の運動や娯楽への配慮がなされている。熱帯地域での活動を想定し、空調機能も増強された。このような巨艦となったにもかかわらず、ソ連海軍はさらなる艦型拡大を要求し、3番艦以降では、原子炉補機区画を分割して全長をさらに11メートル延長した発展型の949A型に移行した[2]

排水量の増大にもかかわらず、迅速な進出と避退によって奇襲効果と生残性を向上するため、水中速力の向上が求められたこともあり、原子炉としては大出力のOK-650M加圧水型原子炉が2基搭載されるとともに、661型潜水艦(パパ型)と同様の2軸推進艦となった。なお原子炉は、原型ではOK-650M01,949A型ではOK-650M02とされている。電源としては、DG-190ターボ発電機1基、424型銀亜鉛電池152基2群が搭載された。静粛性の向上のため、騒音源となりうる機器は全て3段式のサスペンションに乗せられ、また船体には特殊な防音ゴムが貼付された[2]


  1. ^ 扉の部分に埃がたまりやすく、電気系統の接触不良がしばしば起きていたため、扉を頻繁に開け閉めして接触を確認することが多かったことが背景にあるという。
  2. ^ 換気ダクトには艦内での爆発を考慮した区画処理は施されていなかった。これは設計上の欠陥であったとのこと。
  1. ^ a b c 「海外艦艇ニュース ポセイドン原子力魚雷搭載用のロシア原潜が進水」『世界の艦船』通巻903集(2019年7月特大号) 海人社 P.181
  2. ^ a b c d e Polutov Andrey V.「ソ連/ロシア原潜建造史(14)」『世界の艦船』第619号、海人社、2003年12月、108-113頁、NAID 40005926748 
  3. ^ a b c d Polutov Andrey V.「ソ連/ロシア原潜建造史(第13回)」『世界の艦船』第618号、海人社、2003年11月、150-155頁、NAID 40005926748 
  4. ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. https://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  5. ^ a b c ナショナルジオグラフィックチャンネル衝撃の瞬間~番外編~ 「ロシア原子力潜水艦の悪夢」』
  6. ^ Polutov Andrey V.「注目のロシア新型戦略原潜「ボレイ」型」『世界の艦船』第712号、海人社、2009年10月、98-101頁、NAID 40016800606 
  7. ^ 米国が戦慄、ロシア新型水中兵器の恐るべき攻撃方法 米軍施設を一気に吹き飛ばすポセイドン”. JBpress(日本ビジネスプレス) (2019年5月2日). 2019年5月13日閲覧。
  8. ^ Nerpa Shipyard Starts Dismantling of Nuc Sub Krasnodar”. rusnavy.com. 2020年1月30日閲覧。
  9. ^ Soviet-Era Nuclear Submarine Catches Fire During Disassembly”. vesselfinder.com. 2020年2月3日閲覧。


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