アスペルガー症候群
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疫学
アスペルガー症候群は性別との相関関係があり、4倍程度男性に多い[43]。アスペルガー症候群の者は全人口の1%程度とされるが[43]、男性の1.6%、女性の0.4%はアスペルガー症候群と言う計算になる。知的障害を伴わない自閉症である高機能自閉症とアスペルガー症候群には強い遺伝的な要素がある[44]。G.R.テロングとJ.T.ダイアーは高機能自閉症の人がいる家族の3分の2が、一等親血縁者か二等親血縁者にアスペルガー症候群の者がいることを発見した[45]。
Sarah Cassidyらによる、英国の患者を対象とした臨床コホート研究による報告によると、アスペルガー症候群を持つ成人では、一般成人の9倍以上の自殺リスクがあり、社会的孤立や排除、失業等で二次的うつ病の危険因子を生ずることが多く、自殺リスクを低減するための適切なサポートが必要であると言う[46]。
社会的状況
周囲への影響
アスペルガー症候群を持つ成人が周りに大きな影響を与えることがある。例えばカサンドラ症候群というのは、アスペルガー症候群の夫(パートナー)と情緒的な相互関係が築けないために妻に生じる、身体的・精神的症状である。杉山登志郎はアスペルガーの独身率(特に男性の)が高いことに言及している[47]。レオ・カナー自身が自閉症児の両親の離婚率の高さに言及もしている[48]。
アスペルガー症候群を「障害」とすることについての議論
主にアメリカの学会などで、アスペルガー症候群そのものは障害ではなく、治療すべき対象ではないという議論がある[49]。また、そもそもアスペルガー症候群を「シンドローム」(症候群)であるとか、「ディスオーダー」(障害)とすべきでないという主張もある[50]。
スティグマ
2001年5月にソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (日本)がビデオスルーで「アスペルガー 死の団欒」と名づけて発売する予定だった外国映画(原題は「Absence of the Good」、1999年のアメリカ映画)が、抗議を受けて発売中止となった。原題にはアスペルガーという単語は使われておらず(直訳しても「良心の不在」程度にしかならない)、登場人物にもアスペルガー症候群らしい人物は存在しないと考えられる[51]。
また、2008年頃から相次いで医師によるアスペルガー症候群の解説書が刊行されていることについて、医師たちの執筆動機の一つには、あたかもアスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいかのような解釈への対処がある。この背景には、一部の少年事件の加害者がアスペルガー症候群だと報道されたことが挙げられる。しかし、アスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいというデータは確認されておらず、鑑別所や少年院の中の該当者は2%程度とされている。また、犯罪を起こしたケースについても、対人コミュニケーションスキルの不足から、当人が世の中の仕組みをよく理解できていないことによって軽微な犯罪が引き起こされてしまったケースがほとんどである[52]。
歴史
この診断名は、オーストリアの小児科医、ハンス・アスペルガーにちなんで付けられた[5][53]。
1944年にハンス・アスペルガーは「小児期の自閉的精神病質」という題で4例の子どもについての論文を発表した。前年の1943年にはアメリカの精神科医レオ・カナーが早期乳幼児自閉症に関する論文を発表し、カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は顧みられることが少なかった。日本ではアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたが、イギリスやアメリカの影響が強くなり、忘れられがちとなった。
英語圏では1981年に、イギリスの児童精神科医のローナ・ウィングがアスペルガーの業績を再評価したことがきっかけとなり、広く知られるようになった。ウィングは多数例から、自閉症とは診断されていなくても、社会性、コミュニケーション、想像力の3つの面で同時に障害をもつ子どもたちがいることに気づいた。当時は、自閉症の診断は言語による意思疎通が限定されており、対人的関心が非常に乏しい子どもに対してのみ行われ、言葉による意思疎通が可能か、一方的でも対人的関心がある場合は自閉症とは診断されなかった。ウィングは三つ巴の障害を持ちながら自閉症と診断されない子どもたちの一部が、アスペルガーの報告した症例に似ていることからアスペルガー症候群の診断名が適切であると考えた。
1981年以降は、世界的にも注目されるにいたり、国際的な診断基準であるICD-10やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)にもその概念が採用された。
- 1944年 - ハンス・アスペルガーによって「自閉的精神病質」と初めて報告されたが、第二次世界大戦のため、その論文は戦勝国側では注目されていなかった。
- 1981年 - ローナ・ウィングがアスペルガー症候群の発見を紹介[54]。
- 1989年 - 社団法人日本自閉症協会設立
- 1990年代になり世界中で徐々に知られるようになった。しかし、日本ではドイツ精神医学の影響が強かったことから、ローナ・ウィングの紹介以前に知られていた[55]。
- 1992年 - 世界保健機関 (WHO) の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』 (ICD-10)に診断基準が初めて掲載される。
- 1994年 - アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル』 (DSM-IV)に診断基準が初めて掲載される。
- 2000年 - 豊川市主婦殺人事件。文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させた。
- 2003年 - 長崎男児誘拐殺人事件。出版などを通じて社会的な関心が広まった。
- 2005年 - 発達障害者支援法施行
- 2005年 - 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)施行
- 2006年 - 障害者自立支援法施行
- 2013年4月 - アメリカ精神医学会のDSM-5から、アスペルガー障害の診断名は消えた[9]。
- 2013年4月、障害者自立支援法改正により、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)となる。
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アスペルガー症候群と同じ種類の言葉
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