はるな型護衛艦 装備

はるな型護衛艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/03 02:18 UTC 版)

装備

本型の装備は、多くの点で、たかつき型(38DDA)のものを航空艤装に対応して再配置したものとなっている。

センサー

センサー面ではたかつき型(38DDA)のものがほぼ踏襲されており、レーダーとしては対空捜索用にOPS-11B、対水上捜索用にOPS-17を、電波探知装置(ESM)としてはNOLR-5を搭載した[1][14]

またソナーも同様で、66式探信儀 OQS-3をバウ・ドームに収容して搭載した。ただし、当初計画されていた低周波の75式探信儀 OQS-101の後日装備は、OQS-101自体大重量であったため実現せず、また可変深度ソナーの後日装備は実現しなかった[1][15]

なお海上自衛隊ではたちかぜ型(46DDG)システム艦化に着手したが、43・45年度予算で建造された本型はこれに先行して計画・建造されたことから、戦術情報処理装置を搭載せず、2次防艦と同一のCIC運用構想に基づいた艦となり、システム艦化は後年のFRAM改修を待つ必要があった[1]

武器システム

前甲板と艦橋構造物

艦砲としては、たかつき型4番艦(41DDA)と同様に、73式54口径5インチ単装速射砲(Mk42 5インチ砲)72式射撃指揮装置1型A(FCS-1A)と組み合わせて搭載した[1][16]。8艦6機体制の構想において、これらの5インチ砲は、ミサイル護衛艦ターター・システムを補佐して、艦隊防空に当たることとされていた[7]

砲の搭載数については、「5インチ砲を1基にして飛行甲板を拡大する事により対潜ヘリコプター2機の同時発着を可能にすべきだ」との航空機関係者の意見と、あくまで5インチ砲2基装備に拘る砲雷関係者の意見が対立し、最終的に5インチ砲2基装備に落ち着いたとされている[注 1]。2基の5インチ砲は、74式アスロック発射機(Mk.16 GMLSの国産化版)とともに、前部に集中して背負い式に搭載されている。上記のように後方射界が限定的となる問題があったことから、短SAMの後日装備の含みが持たされており、後のFRAM改修のさいに実現することになる[1]

アスロック発射機は、たかつき型と同形式で、艦橋構造物左舷にある弾庫からラマー・クレーン(ローダークレーン)を介して行う機力補助の手動装填方式とされた[1]

艦載機

艦載機と飛行甲板

#来歴で述べたように、本型の中核的な装備となるのが3機の艦載ヘリコプターである。大型の哨戒ヘリコプターを駆逐艦相当の艦で運用することに関してはカナダ海軍が先駆者であったが、同国海軍でも、本型に1年先行するイロクォイ級でシーキング2機を搭載したのが最大数であり、3機を搭載する駆逐艦級の水上戦闘艦は他に例を見ないものであった[1][注 2]

艦中央部から後部にかけてヘリ格納庫と飛行甲板ヘリコプター甲板)を配置している。ヘリコプター甲板は全長50×最大幅17メートル(平均15メートル)を確保し、前方に1機を駐機しつつ、後方の発着スポットで1機を発着艦させることが可能となった[15]

当時の航空機運用艦としては小型な本型において航空機の運用を実現するためには、着艦拘束・機体移動システムが不可欠であり、カナダ製のベアトラップ・システムが導入された。これはカナダ海軍がサン・ローラン級駆逐艦のヘリコプター駆逐艦改修にあたって開発したもので、海上自衛隊では、本型への搭載に先立ち、昭和42年度に輸送艦しれとこ」において運用試験を実施している[1][15]。同システムは、ヘリコプターの機体下面に設置されたプローブと、艦の飛行甲板上に設置されたベアトラップおよびその移動軌条によって構成されており、本型では2条の軌条が格納庫の両舷側に向かって設置されている。移送用シャトルは2基装備として設計されたが、建造費低減のため、「はるな」は建造当初は1基のみを搭載しており、FRAM時に2基装備に改修された。また、ヘリコプター甲板上右舷側には、発着艦管制室(LSO)が設置されている[1]。これらのベアトラップ・システムは順次に改良を受けつつ、本型以降、ヘリコプター搭載能力を持つ護衛艦のほとんど(ひゅうが型(16DDH)いずも型(22DDH)を除く全て)に搭載されることとなっている[15]

上記の検討を経て、イタリア海軍アンドレア・ドーリア級巡洋艦と同様、格納庫は甲板上に設置され、「はるな」は就役時にHSS-2を搭載していたが、後に「ひえい」と同じHSS-2Aに改め、両艦ともHSS-2BSH-60Jと順次更新していった[10]

また、不時着水したHSS-2の回収を想定して、格納庫上に力量8トンのクレーンが設置された。しかし、同機は簡易フロートを有し不時着水を想定していたものの、外洋でローターの回転が停止すると横倒しになってしまうことが後に判明したため、クレーンによる回収は現実的でなく、当初の目的ではあまり用いられなかった[1]

FRAM改修

本型は海自初の哨戒ヘリコプター搭載艦として活躍したものの、続く第4次防衛力整備計画で建造されたしらね型(50DDH)は本型と同等の航空運用能力に加えて戦術情報処理装置と短SAMを搭載しており、7年という計画年度の差を超える性能差が生じていた。このことから、五六中業で、本型は大規模な近代化改修を受けることになった。この改装は、アメリカ海軍の艦隊再建近代化計画英語版(FRAM)にならって"FRAM"と呼称された[19]

五三中業で行われたたかつき型のFRAM改修では旧式化した武装と換装するかたちでの近代化が行われたが、航空運用プラットフォームとしての性格が強い本型では、そもそも代償として撤去しうる装備が乏しく、デッキクレーンやカッター、第2方位盤程度であったことから、艦橋構造物を拡大するとともに、マック周辺および格納庫天井甲板の面積が最大限に活用された[19]

改装内容はおおむね下記の通りであった。

戦術情報処理装置の搭載
はるな」はOYQ-6-2、「ひえい」はOYQ-7B-2を搭載した[20]。これらはいずれも、同年度計画のあさぎり型(58DD)の搭載機と準同型機であり、戦術データ・リンクとしてリンク 11の送受信に対応したことで、戦術単位としての護衛隊群の作戦能力が著しく向上した[19]
レーダー・電子戦装置の更新・換装
対空捜索用はOPS-11Cに更新、対水上捜索用はレーダーは58DDと同型のOPS-28に換装された[19]
また電子戦装置も、従来のNOLR-5電波探知装置にかえて、「あさかぜ」以降のDDG・DDHで標準となったNOLQ-1電波探知妨害装置を搭載するとともに、OLR-9Bミサイル警報装置Mk 36 SRBOCも搭載した。
個艦防空能力の強化
近接防空火器(CIWS)として高性能20mm機関砲個艦防空ミサイル(短SAM)としてシースパローIBPDMSを搭載した。シースパローの8連装発射機はヘリコプター格納庫上部に、CIWSは艦橋の後上部に設置された。

これらの改修の結果、基準排水量として「はるな」は250トン、「ひえい」は350トン増加し、最大速力は38DDAと同様に31ノットとなった。「はるな」の改修は、武器は昭和58年度、船体・機関は59年度で行われ、予算は91億円。また「ひえい」の改修は、武器は昭和59年度、船体・機関は60年度で行われ、予算は110億円であった[19]


注釈

  1. ^ また検討の最初期段階では、艦砲を全廃し全通飛行甲板にして、ターター・システムを搭載する構想もあった[17]
  2. ^ イタリア海軍のアンドレア・ドーリア級巡洋艦は、計画段階では、本型と同様にシーキング3機の運用を予定していたが、実際には航空艤装が小さすぎて余裕がなく(ヘリコプター甲板は30×16メートル)、より小型のAB-204(後にはAB-212)4機の搭載となった[18]
  3. ^ a b 固定兵装ではなく搭載品扱い
  4. ^ STOVL対応に改修予定
  5. ^ フリゲート艦隊が爆雷攻撃を実施する『ゴジラ』では「海上保安庁」でクレジットされている
  6. ^ ゲームでの対潜ヘリユニットは4機で1ユニットを構成するため1機を分離するか生産段階で3機に留めなくては搭載できない
  7. ^ それまでのシリーズではシースパローや5インチ砲を用いての対空・対艦・対地攻撃が可能だった

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 香田 2015, pp. 118–123.
  2. ^ 香田 2015, pp. 112–117.
  3. ^ 山崎 2017.
  4. ^ 香田 2015, pp. 36–43.
  5. ^ 岡田 1994.
  6. ^ 香田 2015, pp. 106–111.
  7. ^ a b 長田 1995.
  8. ^ 香田 2009.
  9. ^ 岡部 2001.
  10. ^ a b 阿部 2000, pp. 102–107.
  11. ^ a b 香田 2017.
  12. ^ a b 阿部 2011.
  13. ^ 香田 2015, pp. 134–143.
  14. ^ 多田 2010.
  15. ^ a b c d 海人社 2008.
  16. ^ 坂田 1995.
  17. ^ 荒木 2012.
  18. ^ Gardiner 1996, pp. 199–204.
  19. ^ a b c d e f 香田 2015, pp. 214–219.
  20. ^ 山崎 2011.
  21. ^ 海人社 2009.
  22. ^ 超最新ゴジラ大図鑑 1992, pp. 172–173, 「海上兵器」






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