スピン・軌道相互作用
電子のスピンsと軌道角運動量lが平行のときと反平行のときで、相互作用の大きさが違うので二つの状態は異なるエネルギー状態をとる。2p電子ではエネルギーの低いほうから順にL2 (全角運動量j = l - s =1/2)とL3 (全角運動量j = l + s =3/2)とができる。EELSにおいて2p状態から3d非占有バンドへの遷移(Lエッジ)ではエネルギーロスの小さいほうからL3、L2の順にスペクトルが現れる。これらのスペクトルは占有状態のエネルギー分裂(数eV〜20eV)を与えるものなので、EELS解析での目的である非占有状態についての情報を与えるものではない。ただL3/ L2の強度比は2:1になるはずだが非占有状態の状態密度(化学結合状態)の影響を受けて変化する。この強度比プロファイルを計算と比較すると3d電子の価数についての情報が得られる。計算にはコアホール相互作用、3d電子の電子相関、価数などを入れなければならない。L3とL2の強度比L3/L2はハイスピンのとき大きく、ロウスピンのとき小さい傾向がある。
スピン軌道相互作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 14:31 UTC 版)
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2023年1月) |
スピン軌道相互作用(英: Spin orbit coupling、稀に英: Spin orbit interaction)とは電子のスピンと、電子の軌道角運動量との相互作用のこと。
相対論的に取り扱われるディラック方程式(相対論的量子力学)では自然に導入される概念である。スピン軌道相互作用により、縮退していた電子のエネルギー固有値が分裂する。
ゲッパート=マイヤーとイェンセンは、原子核の問題について、スピン軌道相互作用を導入した殻模型を用いれば、その準位の分裂から、実験的に知られていた安定な核子数、魔法数を説明できることを発見し、ノーベル賞を受賞した。
原子の最外殻電子ではスピン軌道相互作用によりスピン・軌道角運動量の向きがそろうことがある。常温の範囲では分裂した準位(LS多重項という)の中で最低エネルギーをもつ準位に状態がある確率が高い。最低エネルギーの多重項を知るためにフントの規則とよばれる実験則が有効である。
古典的な説明
![]() | この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2023年1月) |
水素原子内の電子は陽子のまわりを回転しているが、これを電子の上に乗っている人から見ると、電子のまわりを陽子が回転しているように見える。回転している陽子は円形電流とみなすことができ、ビオ・サバールの法則により、それは電子上に磁場
球対称なポテンシャル中での一電子に関する、スピン軌道相互作用 HSO は、
- この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2023年1月)
スピン軌道相互作用HSO が一粒子ポテンシャルに付け加わる場合を摂動論で考える。
一体ハミルトニアンH0 = T + U(r) の固有値問題を解くことによって一粒子準位Enl と一粒子波動関数Rnl(r)Ylm(θ,φ)が求められているとする。粒子のスピンは1/2とする。
このような相互作用があると、スピン角運動量と軌道角運動量は別々に良い量子数になることができなくなり、全角運動量のみが良い量子数になる。の値としては角運動量の合成則からとが可能である。
であるから、の期待値はに対して、に対してと得られる。
動径積分をとおくと、の軌道との軌道のエネルギー差はとなる。またがn およびl によって余り変化しないものとすれば、スピン軌道分裂はlの値が大きいほど大きくなる。
関連項目
参考文献
- ^ 砂川重信『量子力学』岩波書店、1991年。ISBN 4000061399。
- スピン軌道相互作用のページへのリンク