Yahoo! BB顧客情報漏洩事件
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Yahoo! BB顧客情報漏洩事件(ヤフー! ビービー こきゃくじょうほうろうえいじけん)は、Yahoo! BB登録者の個人情報が漏洩した事件である。
2004年2月27日、約450万人分ものYahoo! BB登録者の個人情報が漏洩している事が発覚し、この情報に対してYahoo! BBに現金を要求していたソフトバンク関連元社員らが逮捕された[1][2][3][4]。
ソフトバンクBBの公表した被害総額は100億円を超える。
概要
事件発覚から犯人逮捕まで
- 2004年1月23日、ソフトバンクはYahoo! BB登録者の個人情報が外部に漏れていた事を発表した[5]。この時点での発表では242人分、その後の2月27日には約470万人分の情報が漏れていた可能性を示唆し、最終的な漏洩数は約450万人であるとした。日弁連のコンピューター委員会が発表したところでは漏洩数は660万人であるとしている[6]。なお、2月24日には警視庁は主犯格である右翼団体「新生日本協議会」元会長で出版社経営の人物と東京都内のヤフーBB代理店の役員2名をソフトバンク本社に対し個人情報と引き換えに30億円を脅し取ろうとした恐喝未遂容疑で逮捕した[7][8]。また、以上の東京都内のルートとはまったく別の犯行として、愛知県の会社員も個人情報と引き換えに1000万円を恐喝した同様の容疑で逮捕した。
- 3月初旬、ソフトバンクは個人情報管理諮問委員会および技術諮問委員会を設置し、全容解明に取り組む。漏洩元はその後の調査により、外部からの不正アクセスと判明し、不正アクセス事件として報道される。
- 同年5月下旬には新たな東京都内ルートの犯行関与者としてソフトバンクの元業務委託先社員他1名も逮捕され、個人情報漏洩の全容が明らかとなった[9][10]。個人情報が漏洩した原因として、当初発表した「外部からの不正アクセス」という理由ではなく、ソフトバンク社員であれば誰でも閲覧し入手できるような状況であったことを改めて発表。後日、社内における個人情報の管理を厳守するように徹底されることになった。
被害者に対するソフトバンク側の対応
当初、殺到する苦情に対し、ソフトバンク側はお詫び状を郵送で送付[11]。それでも苦情が沈静化しないことから、ソフトバンクBB加入者に対して500円の金券を送ることにした[12]。
ソフトバンク社長の孫正義は、自由民主党の調査会で「(事件に関して)反省している」と答えたが、「実態は窃盗事件」「情報を盗んだものを処罰する法律がない」と付け加えた。
また、関連会社ソフトバンククリエイティブが発行している雑誌PC Japanは同誌のライターが本件に関与していた事が判明したことを受けて一時休刊を余儀なくされたものの、後に誌面内容や編集体制等を見直して復刊した。
裁判
- 2004年7月9日、東京地裁(木口信之裁判長)は「重要な個人情報を扱う会社を狙った模倣性が高い犯罪で刑事責任は重いが、未遂に終わった」として愛知県内の被告人に懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役4年)の有罪判決を言い渡した[13]。
- 同年8月11日、東京地裁(井下田英樹裁判官)は「膨大な顧客情報を手段にした卑劣な犯行だが、被告の役割は従属的だった」として東京都内の被告人に懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役5年)の有罪判決を言い渡した[14][15]。
- 同年10月5日、東京地裁(大熊一之裁判官)は「事件はハッカーによる個人情報の不正取得と結びついた企業恐喝として社会不安をもたらした。被告はその犯行全体を主導した」として主犯格の被告人に懲役4年(求刑:懲役6年)の実刑判決を言い渡した[16]。
- 同年11月19日、東京地裁(井下田英樹裁判官)は「犯行は企業の個人情報管理に対する社会的不安を引き起こし、軽視できない」として東京都内の被告人に懲役2年6月・執行猶予5年(求刑:懲役2年6月)、主犯格の義子の被告人に懲役2年・執行猶予4年(求刑:懲役2年)の有罪判決を言い渡した[17]。
- 2006年5月19日、大阪地裁(山下郁夫裁判長)は大阪市内の弁護士ら5名が起こした損害賠償訴訟について、「不正アクセスを防止するための注意義務を怠った」としてヤフー・グループの「BBテクノロジー」に対して一人当たり6000円の賠償を命じた[18]。
犯人と創価学会
『日刊ゲンダイ』が一面で[19]創価学会幹部が流出事件に関与していたことを報道。またその2名が過去に創価学会が起こした言論出版妨害事件や宮本顕治宅盗聴事件にも関わっていたことから創価学会全体に盗聴をする体質があるのではと批判した[20][21]。ジャーナリストの段勲はフォーラム21の中で逮捕された4名のうち2名が創価学会員でヤフーBB代理店の役員を務めていた[22]ことから、2002年に創価学会員が起こした「携帯電話通話記録窃盗事件」を引き合いに出し、「携帯電話・通信記録の盗み出し、そして今回の事件。同事件はまだすべて解明されたわけでないが、流出した450万人に及ぶ個人データの行方が気になる」と締めくくっている[23]。
出典
- ^ “お客様情報流出問題に関する、現時点までの調査結果と今後の対策について”. ソフトバンクBB (2004年2月27日). 2004年2月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「顧客情報は全660万人分、通話記録も ヤフーBB事件」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年6月18日。オリジナルの2004年12月8日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB 通話記録流出 140万件か」『東京新聞』中日新聞東京本社、2004年6月18日。オリジナルの2004年6月18日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「顧客情報を引き出した男らを起訴 ヤフーBB事件で地検」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年6月18日。オリジナルの2004年12月24日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ “ソフトバンクBB、Yahoo! BBの個人情報242件が流出”. INTERNET Watch. インプレス株式会社 (2004年1月23日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ 萩原栄幸 (2012年8月31日). “IT事件簿 日本最大の個人情報漏えい事件をひも解く”. ITmediaエンタープライズ
- ^ “個人情報の流出を“確認”しているのは242人のみ~ソフトバンクBB”. INTERNET Watch. インプレス株式会社 (2004年2月24日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ “Yahoo! BBの顧客情報流出事件、容疑者は販売代理店の経営者ら”. INTERNET Watch. インプレス株式会社 (2004年2月24日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB事件、IP電話記録140万件も流出」『読売新聞』読売新聞社、2004年6月18日。オリジナルの2004年6月18日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「不正アクセス容疑などで2人書類送検 ヤフーBB事件」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月16日。オリジナルの2004年12月5日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ “Yahoo! BB、470万人分の顧客情報が流出の疑い”. INTERNET Watch. インプレス株式会社 (2004年2月24日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ “ヤフーBB全会員に500円、情報流出事件で孫氏が謝罪”. ITmedia News. アイティメディア株式会社 (2004年2月28日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ 「◯◯被告に有罪判決 ヤフーBB恐喝未遂事件」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月9日。オリジナルの2004年12月5日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB恐喝未遂事件で会社役員に有罪判決 東京地裁」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年8月12日。オリジナルの2005年2月7日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB情報流出、恐喝未遂罪の会社役員に有罪判決」『読売新聞』読売新聞社、2004年8月11日。オリジナルの2004年8月17日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB恐喝未遂事件、主犯格の男に懲役4年の実刑」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年10月5日。オリジナルの2004年12月5日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「ヤフーBB恐喝未遂、幇助の2被告に有罪 東京地裁」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年11月19日。オリジナルの2004年11月21日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 「情報流出、ヤフーBBに賠償命令 顧客1人6千円」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年5月19日。オリジナルの2006年5月21日時点におけるアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
- ^ 日刊ゲンダイ 2004年2月27日1面
- ^ 日刊ゲンダイ 2004年2月27日1面~2面
- ^ 宮本顕治宅盗聴事件の判決文で挙げられた実行犯の一人が今回の容疑者と同一人物
- ^ [1] 『しんぶん赤旗』
- ^ “創価学会幹部が逮捕されたヤフーBB「個人情報流出事件」の背景”. フォーラム21 (2004年3月15日). 2006年6月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月15日閲覧。
関連項目
- 携帯電話通話記録窃盗事件 - 2002年にNTTドコモで発生
固有名詞の分類
平成時代の事件 |
日経新聞記者北朝鮮拘束事件 中央自動車道切り通し爆破事件 Yahoo! BB顧客情報漏洩事件 ジェイコム株大量誤発注事件 東京電力湯沢発電所の水利権問題 |
個人情報流出事故・事件 |
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