Tektiteとは? わかりやすく解説

テクタイト【tektite】

読み方:てくたいと

黒曜石に似たガラス質の直径数センチ程度の球形・楕円体や円盤状の物質。東南アジア・オーストラリア・アフリカ・北アメリカなどの一部で発見され、成因については隕石(いんせき)の衝突説などがある。


テクタイト

(Tektite から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/04 06:54 UTC 版)

Tektites
Moldavite
Australite

テクタイト(英: tektite、語源はギリシャ語の tektos --溶けた-- から)は、隕石等の天体が地球に衝突した際に、地表の岩石が高温で溶融し、液滴として飛散・急冷することで形成される天然ガラスである[1]。一般に数cm程度の大きさで、黒色から褐色、緑色を呈し、球状・水滴状などの液滴型や、縁をもつボタン型・帽子型などの溶融剥離型の形態を示す[2]。

概要

テクタイトは地球上の限られた地域に散在して分布し、形態の多くが回転対称性を示すことから、溶融状態で飛翔・回転しながら冷却したことが示唆される[2]。化学組成は流紋岩質のものが多く、一般的なテクタイトはSiO₂含有量が68–82 wt%と高く、H₂O含有量は 0.005 wt% 以下(多くても 0.02 wt%)と極めて低く、火山ガラス(黒曜石)とは明瞭に区別される[3]。この著しい脱水状態は、地表起源物質が超高温条件下で急冷したことを示す重要な特徴である。

起源に関する研究史

テクタイトは、そのガラス質の外観が黒曜石に類似することから、研究初期には地球の火山活動に由来するものと考えられていた。しかし、特定のテクタイト型が地層の年代や層準に関係なく広域に分布すること、また一般的なテクタイトが極めて低い水分含有量を示すことなどから、通常の火山噴出物とは成因的に大きく異なることが明らかとなり、火山起源説は次第に否定された。

その後、月面の巨大火山活動や、月における天体衝突によって放出された物質が地球に到達したとする月起源説が提唱された[4][5]。この説は、一部のテクタイトが超音速飛翔に伴う空気抵抗によって形成されたと考えられる特異な形態を示すことを根拠としていた。しかし、テクタイトの化学組成が月の表層を構成する玄武岩質・斑れい岩質岩石と大きく異なり、地球表層の花崗岩質岩石や砂岩に近いことが明らかになるにつれ、月起源説にも疑問が呈されるようになった[2]。

その後、テクタイトの放射年代測定結果による新たな視点が提供された。北アメリカ、ヨーロッパ、西アフリカ、南西アジア[6]、オーストラリア地域[7]などに分布する主要なテクタイト群の年代はいずれも新生代に集中しており、これらの年代に対応する大規模火山活動や衝突構造は月面には存在しない。このことから、テクタイトが月起源である可能性は否定された。

現在では、テクタイトは天体衝突によって地球表層の岩石が高温で溶融し、その溶融物が液滴状となってクレーター周辺数百~数千 kmの範囲に飛散・固結したものと考えられている。この理解は、テクタイトの分布域と衝突クレーターとの対応関係、ならびに衝突構造内に認められる衝撃変成岩や溶融岩の産状とも整合的であり、現在の地質学において広く受け入れられている[3]。

分布と給源クレーター

テクタイトの分布域(テクタイト・ストリューフィールド)は、地球上で主に4地域が知られている。

給源クレーターが特定されている地域

給源クレーター未発見の地域

給源クレーターの地質学的特徴

確認されているテクタイト給源クレーターでは、共通して以下の特徴が報告されている。

ただし、クレーター内に大量の溶融物が保存される例は少なく、サドベリークレーターやポピガイクレーターなどの一部の巨大クレーターに限られている。多くの場合、溶融物は周囲の基盤岩・堆積岩とともに飛散したと考えられている。

日本における研究と位置づけ

日本には高松クレーター[11]や御池山クレーター[12]など、天体衝突構造の可能性が議論されている地形が存在するが、いずれも決定的証拠は十分ではない。

一方、日本列島の南に位置する南西諸島や小笠原諸島は、オーストラリア・アジアテクタイト分布域の北東縁にあたり、将来的にテクタイトが発見されれば、未解明であるこの地域の給源クレーター特定に重要な手がかりを与える可能性がある[13]。

脚注

出典

  1. ^ “テクタイト”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2026年2月4日閲覧。
  2. ^ a b c 『地球化学講座2「宇宙・惑星科学」』培風館、2008年、190-208頁。 
  3. ^ a b 小出良幸 (2022). “未分化隕石から地球最初の5億年へのアプローチ”. 札幌学院大学人文学会紀要 112: 29-73. 
  4. ^ 柴田勇 (1965). “テクタイトに関する最近の資料”. 地学雑 74 (4): 226-231. 
  5. ^ 柴田勇 (1969). “テクタイトに関する最近の資料”. 地学雑 78 (6): 440-441. 
  6. ^ a b Barnes V. E., Pitakpaivan K. (1962). “Origin of indochinite tektites”. Proc. Nat. Acad. Sci. United States of Amer 48 (6): 947. 
  7. ^ a b Izett G. A., Obrandovich J. D. (1992). “Laser-fusion 40Ar/39Ar age of Australasian tektites”. Lunar and Planetary Science Conference 23. 
  8. ^ Schmieder, M., Kennedy, T., Jourdan, F., Buchner, E., Reimold, W. U. (2018). “A high-precision 40Ar/39Ar age for the Nördlinger Ries impact crater, Germany, and implications for the accurate dating of terrestrial impact events”. Geochimica et Cosmochimica Acta 220: 146-157. 
  9. ^ Koeberl, C., Poag, C. W., Reimold, W. U., Brandt, D. (1996). “Impact origin of the Chesapeake Bay structure and the source of the North American tektites”. Science 271 (5253): 1263-1266. 
  10. ^ Koeberl, C., Brandstätter, F., Glass, B. P., Hecht, L., Mader, D., Reimold, W. U. (2007). “Uppermost impact fallback layer in the Bosumtwi crater (Ghana): Mineralogy, geochemistry, and comparison with Ivory Coast tektites”. Meteoritics & Planetary Science 42 (4-5): 709-729. 
  11. ^ 山田涼子、佐藤博明 (1998). “香川県高松クレーター産ガラスの岩石学的研究”. 岩鉱 93: 279-290. 
  12. ^ Sakamoto, M., Gucsik, A., Nishido, H., Ninagawa, K., Okumura, T., Toyoda, S. (2010). “MicroRaman spectroscopy of anomalous planar microstructures in quartz from Mt. Oikeyama: Discovery of a probable impact crater in Japan”. Meteoritics & Planetary Science 45: 32-42. 
  13. ^ “テクタイトの給源クレーター”. 日本地質学会. 2026年2月4日閲覧。

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