POP before SMTPとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > POP before SMTPの意味・解説 

ポップ‐ビフォー‐エスエムティーピー【POP before SMTP】

読み方:ぽっぷびふぉーえすえむてぃーぴー

インターネット電子メール送信するために用いられる認証方式の一。SMTPサーバーが、送信者が電子メール受信したときの認証情報代用することによって行う。→SMTPSSMTP認証


POP before SMTP

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/24 06:41 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

POP before SMTP(POP ビフォー SMTP、ポップビフォーエスエムティーピー)とは、SMTPに利用者認証を付加するための機構。利用者が電子メールをSMTPで送信する前 (before) に、POP (POP3) の認証を通過させておくことによって送信を許可することから、この名称があった。

この方法は SMTP の認証機構が普及する前[1]RFC 2476[2] - Message Submission の 3.3章 "Authorized Submission" においてクライアント制限方法の一つとして記述されていたもので、その詳細を規定したRFC文書は存在しない。SMTP のみで認証を完結させたSMTP-AUTHの普及に伴い、現在は使われなくなってきている。

背景

インターネットの利用者が電子メールを送信する場合、ISPなどがその網内に用意したメール送信(中継)用メールサーバSMTPを用いて電子メールを提出し、送信(中継)を要求する形式が一般的である。しかし、SMTPはもともと配送経路上のメールサーバがバケツリレー式にメールを転送することを想定していたため、利用者認証の機構を持たなかった。したがって、そのままではISP利用者だけでなく、インターネット上のあらゆる利用者に、送信用メールサーバを使用されてしまう状態になってしまう。インターネットの利用が学術・研究目的に限られ利用者の善意を期待できた時代には、このようなメールサーバの運用も一般的であったが、利用者の増大に伴い、これらの利用者制限が全くないメールサーバがスパムの中継のために悪用されるケースが頻発し、メールサーバの運用者は何らかの利用者制限を施す必要に迫られた。

最も単純な利用者制限は、そのメールサーバを運用するISPが保持しているIPアドレス以外からのメール中継要求を常に拒否するようにサーバを設定することであった。こうすることで、そのISPに現在接続している利用者以外からの中継要求を防ぐことができる。しかし、モバイル環境が普及し複数の異なるISPからインターネットに接続することが一般的になり、接続するISPが変わるたびに電子メールソフトの設定を変更(メールの送信に使用するサーバを、現在接続しているISPが運用するものに変更)する必要が生じ、利便性が低下した。また一方、ブロードバンド接続の普及により、従来ダイヤルアップ接続で利用していたISPをメールアドレス維持のためだけに残し、アクセス回線は別のブロードバンド対応ISPに乗り換えるということもしばしばあり、その場合旧ISPのメールサーバが上記のような運用をされているとメールを送信することができなくなってしまう。このように、固定されたIPアドレスによる送信者制限はいろいろと問題があった。これらの対策として生まれたのがPOP before SMTPであった。

概要

利用者がメールを受信する場合は、POP3等を用いてISPの受信用メールサーバから(利用者の端末へ)メールを転送する(取り出す)、という形式が一般的である。POP3等のメール取得用プロトコルは、利用者の認証(利用者名とパスワードによる)が必須となっているため、一旦その認証を通過した利用者端末のIPアドレスを、当面の間は正規利用者であると推定することができる。

この事を利用して、POP before SMTPでは、中継用(送信用)メールサーバは、自ISP内部からの中継要求を受理する一方、外部ISPからの接続に関しては、既にPOP3による認証を通過している端末のIPアドレスからのメール中継要求のみを「一時的に」(通常は数分程度)受け付けるようにする。このようにすることで、全く関係がない(POP3の認証を通過できない)利用者からのメール中継要求を拒否しつつ、正規利用者からのメール中継については受け付けることができる。

DRAC (Dynamic Relay Authorization Control)と呼ばれるRPCを利用した機構をPOP3、SMTPサーバー双方にパッチ等をあてることにより実装し、機能を実現することが多かった。

議論

POP before SMTPの利点として、SMTPとPOP3という既存の方式により実現しているため、一般的な利用者が環境を変更する必要がない、ということがあった。しかし、利用者がメールを送信する前に、POP3による「受信」動作を利用者が行わなければならない、という操作手順の制約も発生し、このことを知らない利用者からは「メールが受信できるが送信できない」という質問・苦情もしばしば見られた。これらは、電子メールクライアントがSMTPの前にPOP を行うという実装を行ったことで次第に解消していった。また、ISPにとっては、本来は全く独立に運用していた送信用(SMTP)メールサーバと、受信用(POP3)メールサーバの間の連携が必要となり、運用がやや煩雑になる、という問題点もあった。

POP before SMTP の前提となっている仮定が必ずしも成り立たないケースも存在した。すなわち、POP3認証を通過した正規利用者と同じIPアドレスで接続してきた利用者が、正規とは限らないケースである。一例として、多数の利用者をNAT環境下に収容しているISPから接続した場合が相当する(NAT環境下では、多数の利用者が単一もしくは少数のグローバルアドレスを共有するため)。また、個人向けインターネット接続サービスでは、同じISP内部の利用者間でIPアドレスを使いまわしている場合がほとんどである。しかし、POP before SMTP は厳密な利用者認証が目的ではなく、ISP外部からの中継(送信)用メールサーバの意図的な不正利用を十分に困難にすることができればよいとされ(実際、同じNAT環境下の他の利用者が、どのISPのメールサーバに対してPOP認証を最近完了したかを知ることや、POP認証を実行した利用者のIPアドレスと同じアドレスを限られた時間内で取得することは、一般利用者の立場では困難であった)、ネットワーク資源が現在ほど潤沢でなかった2000年代には、POP before SMTP は多くの ISP で採用されていた。

POP before SMTPは、上記のようなやや不完全な面もあるため、あくまでも本来の利用者認証の目的で設計されたSMTP-AUTH等が普及するまでの「つなぎ」とするべきという考え方もあった。RFC 2476においてもSMTP-AUTHの利用を先ず挙げている。

現在

上記議論にある中で、IPアドレスの枯渇やセキュリティの面などから、NAT環境はさらに普及していき、企業などではひとつのIPアドレスを複数のクライアントを使いまわすことが一般的になってきた。現在では個人のブロードバンド接続においてもNATが一般的であり、IPアドレスによる許可自体が難しくなってきた。また、ボットコンピュータウイルス等に感染したクライアントなど悪意を持った送信者にも対応することが難しく、メールサーバーの管理者は根本的な対策を求められることになった。

より本質的な解決策として、SMTP自体を拡張して利用者認証を行うSMTP-AUTHが広く提供されるようになり、多くの電子メールクライアントにも実装されるようになったことから、ISPでも廃止されることが多くなり[3][4][5]、現在では提供されることが少なくなってきている。

脚注

関連項目


POP before SMTP

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/14 02:28 UTC 版)

Simple Mail Transfer Protocol」の記事における「POP before SMTP」の解説

SMTP-AUTH 標準化以前普及したユーザー制限方法メール送信する前にメール受信(POP3ログイン)を要求するため、こう呼ばれるRFC 2476 - Message Submission において、クライアント制限する方法一つ挙げられたもの。 詳細は「POP before SMTP」を参照

※この「POP before SMTP」の解説は、「Simple Mail Transfer Protocol」の解説の一部です。
「POP before SMTP」を含む「Simple Mail Transfer Protocol」の記事については、「Simple Mail Transfer Protocol」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「POP before SMTP」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「POP before SMTP」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「POP before SMTP」の関連用語

POP before SMTPのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



POP before SMTPのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2024 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【POP before SMTP】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのPOP before SMTP (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのSimple Mail Transfer Protocol (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS