E-Four
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/17 05:28 UTC 版)
E-Fourは、トヨタ自動車がTHSをベースに開発したハイブリッド車用に最適化された電気式4WDシステム。
2023年9月現在では、ハイブリッドシステムを搭載する主力車のFFベースの四駆車に多く展開されている。
概要
フロントをエンジンとモーター、リアをモーターのみで駆動する。それぞれのモーターは独立しているため、エンジンの動力は前輪のみ伝わる構造になる。また、後輪の動力伝達にプロペラシャフトを使用しないため、ガソリン車の4WDに比べて小型化でき、車重の軽量化、車内空間の確保が図られる。
発進時はモーターが前後共に駆動した状態となり、トルク配分は80:20となる。巡航時はFFで走行する。
坂道やステアリングの舵角に応じて、最大40:60までトルク配分を変えて4WDで走行する。PHEVに搭載されるE-Fourは、発進時のトルク配分は50:50になる。70km/h以上になるとリアモーターを使用しなくなる[注釈 1]。
電子制御が故に4WDにならない場面がどうしても出てくるため、場合によっては意図的に駆動方式の切り替えができるパートタイム4WDに劣ることもある。
過去はバッテリーが大型化してしまうことから、小型車への搭載は難しいとされていたが、技術の進歩により小型車にも搭載できるようになり、大きく普及した[1]。
E-Four Advance
2022年8月、16代目クラウンに初導入。 E-Fourに比べ、リアモーターの最高出力は80.2PS、最大トルク169Nmを発生する高出力型で、その活用頻度も高い。 トルクは100:0から20:80まで状況に応じて配分される。 旋回時の内輪の前後設置荷重配分比を検知し、タイヤ横力などに応じてトルク配分を決定する。 前後輪の負担を等しくし、高トルクのリアモーターを利用し、前輪は旋回、後輪は駆動に特化させるという考えのもと開発された。 巡航時はFFだが、アクセルの開閉度など、加速意図に応じて即座に駆動力を配分するため、FFの使用機会は少ないと言える。 また、バッテリーの残量に応じてエンジンの出力でフロントモーターを発電機として利用し、リアモーターに回す。 E-Fourではあくまでも操縦安定性と燃費の両立を目指したが、こちらはより鋭いコーナリングといった走りの味に磨きをかけた[2]。
歴史
第1世代
2代目エスティマハイブリッドにて初採用。2.4Lアトキンソンサイクルエンジンと組み合わせた。
当初のエンジンの動力はベルト式CVTを通じて伝えられていた。そのため、このシステムはTHS-Cと呼ばれる。エンジンはベルトで始動し、オルタネーターの役割をするジェネレーターを搭載する。
通常走行時はエンジンのみ駆動するため、初代プリウスに比べエンジン中心のシステムであるが、10・15モード燃費は18.0km/Lとすこぶる優秀だった。しかし、リアモーターはあくまでも補助的な役割なので、出力は18kWと低出力だった[3]。
初代アルファードハイブリッドに採用。エスティマと同システムを持つ。
第2世代
2代目ハリアー、クルーガーハイブリッドに採用。3.3LV6エンジンを搭載しており、トヨタブランド史上初のV6エンジン+モーターの組み合わせとなる。
このシステムはデュアルブーストハイブリッドの前身とも言える、走る楽しさを追求したシステムで、「ハイパワーTHS2」と名付けられた。
フロントモーターと発電機の高回転化、新技術の採用、高電圧化[注釈 2]などにより、ハイパワー型のハイブリッドとなった。
モーターのトルクを増幅し、伝達効率を上げる新技術「リダクションギア」は、遊星歯車を利用して一体化されている。
燃費性能も当時としてはかなり優秀で、10・15モード燃費は17.8km/Lを達成している[4]。
3代目エスティマハイブリッドに採用。
エンジンは2AZ-FXEを引き継ぐものの、システムはモーター中心のTHS2を採用し、システム最高出力は190PSとなった。
後に2代目アルファード・初代ヴェルファイアにも採用された。
第3世代
3代目アルファードハイブリッドに採用。エンジンを「トヨタ・ARエンジン|2AR-FXE」に刷新した。
第4世代
- 2015年12月
4代目プリウスに採用。これまでは展開車種が大型ミニバンなどに限定されていたが、技術の進歩でプリウスに搭載できるようになり、2019年にはフルモデルチェンジした12代目カローラにも搭載されるなど、展開車種増加の第一歩となった。
新型E-Fourを開発。後輪の全体トルクを従来比1.3倍に増加させ、かつ状態に応じて後輪に適切にトルク配分を行う新制御と、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、4WDを統合して制御する「AWD Integrated Management(AIM)」を採用していると発表[5]
- 2020年2月
バッテリーの小型化や、サスペンションの工夫で省スペース化し、新型コンパクトカー「ヤリス」への搭載を実現。小型車への搭載の実現で採用の幅が広がり、これ以降は様々な車種への搭載が増えた。
第5世代
- 2022年1月
THSの世代交代が行われ、第5世代のハイブリッドを搭載した4代目ノア、VOXYが新発売。
後輪のモーターは大幅改良され、従来搭載されていた誘導型モーターが30km/hまでしか機能しなかったのに対し、新採用のPMモーターは、従来比6倍の出力を得て、最高稼働速度150km/hを実現。これにより、コーナリングが苦手というE-Fourの弱点をカバーすることに成功し、四輪駆動に恥じない本格的な制御ができるようになった[6]。
脚注
注釈
出典
- ^ 4WD(E-Four)はどんな種類なの?トルク配分を教えて。|トヨタ お問い合わせ・よくあるご質問
- ^ クラウンクロスオーバーRS 2.4LのE-Four Advancedは、雪の上では無敵のハンドリングマシンだ | Motor-Fan[モーターファン]
- ^ トヨタ エスティマ ハイブリッド 新車試乗記 - MOTOR DAYS モーターデイズ
- ^ TOYOTA、ハリアーハイブリッドならびにクルーガーハイブリッドを新発売 - トヨタ自動車株式会社
- ^ 新型「4WDシステム」-Dynamic Torque Vectoring AWD&新型E-Four-|TNGA|モビリティ - トヨタ自動車株式会社
- ^ 新型トヨタ・ノア&ヴォクシー クラス超え「最新」&「初」盛りだくさん レクサス譲りも - AUTOCAR JAPAN
関連項目
- E-Fourのページへのリンク