A・J・P・テイラーによる裁判資料批判
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「ニュルンベルク裁判」の記事における「A・J・P・テイラーによる裁判資料批判」の解説
裁判で証拠とされた資料文書について、イギリス人の歴史学者A・J・P・テイラーはこのように述べている。 これらの資料文書は厖大で立派にみえるけれども,歴史家が使用するには危険な資料である。これらの文書はあわただしく殆んど手当たり次第に,法律家の訴訟事件摘要書を根拠づけるために蒐集されたものである。これは歴史家のとる方法ではない。法律家は訴訟を目的とするが,歴史家は状況を理解しようとする。法律家を納得させる証拠はしばしばわれわれを満足させるものではないし,われわれの方法は彼らには著しく不正確にみえるようである。だが法律家ですら,今日ではニュールンベルクでの証拠について疑念を抱いているにちがいない。文書は被告人の戦争犯罪を証明するためだけでなく,原告である諸大国の戦争犯罪を隠すためにも選択されたのである。ニュールンベルク法廷を設立した四大国のいずれかが単独で裁判を行なったとしたら,中傷はさらにひどかったろう。西欧諸国は独ソ不可侵条約をもちだしただろうし,ソ連はミュンヘン会談やいかがわしい取引をもちだして報復したであろう。四大国に法廷が委ねられたため,第一に実行可能な方法はドイツの単独責任を前もって仮定することであった。評決は裁判に先行し,文書はすでに決まっている結論を証拠立てるために提出されたのである。 — A・J・P・テイラー『第二次大戦の起源』吉田輝夫訳、中央公論社、31-32頁。
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