ショパン:3つの新しいエチュード(練習曲集)
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:3つの新しいエチュード(練習曲集) | Méthode des méthodes de piano von Fr.-J.Fétis KK.IIb/3 CT38-40 | 作曲年: 1839年 出版年: 1840年 初版出版地/出版社: Schlesinger |
作品解説
1839年に作曲され、翌年の1840年に出版された。モシェレスとフェティスの編纂による「メトードのためのメトード」のために作曲されたため、作品番号が付されておらず、また、献呈もなされていない。
第1曲目のヘ短調は、アンダンティーノの2分の2拍子。右手は4分音符による3連音符、左手は8分音符と、一貫して左右の手が異なるリズムを奏する。このことは、作品25-2の同じくヘ短調の練習曲にも言える。右手のメロディーは半音階に富んでいる。それに対する左手は、各小節で1オクターヴを越える分散和音となっている。
第2曲目の変イ長調は、アッレグレットの4分の2拍子。前曲に引き続き、左右の手が一貫して異なるリズムを奏する。ここでは、右手は8分音符による3連音符を、左手は8分音符を奏する。メロディーは右手の3和音の上声が担う。この3和音には、物理的には不可能なスラーが付されている。従って、上声と内声のバランスやタッチを慎重に考慮して奏することが要求されていると言える。左手の隣接音の音程は、1オクターヴを越えることが多い。
第3曲目の変ニ長調は、アッレグレットの4分の3拍子。右手の上声が担うメロディーと、8分音符のスタッカートによる内声とを弾き分けることが要求される。第61小節からの左手には前打音による保続音の手法がみられる。右手の内声のスタッカートと共に、ここから、ショパンがこの作品を軽いタッチのものにしようとしていたことがうかがえる。
このように、表向きは、作品10や作品25の練習曲集よりも教育目的のために書かれた作品であるが、作品10や作品25のいわゆる「コンサート・エチュード」と同様に、単なる指の練習にとどまることなく、音楽的に充実した内容をもつ。また、この3つの練習曲は、ポリリズムが1つの特徴となっているが、その点で、後の作曲家、スクリャービンの練習曲に通じる作品となっている。
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