音素文字としての使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 05:12 UTC 版)
紀元前6世紀から5世紀のアナトリア半島のイオニア方言で、後のイオニア方言ではσσ(ss)と書かれる場所にTのような形の文字(Ͳ)が使われている。例: ΕΛΑͲΟΝΟΣ (ἐλάσσονος)「より小さい(属格)」、 ΤΕͲΑΡΑϘΟΝΤΑ (τεσσαράκοντα)「40」。また、ギリシア語が借用した非ギリシアのエーゲ文明の言語にもこの音があったようであり、借用語や固有名詞にこの字が出現する。例: ΘΑΛΑͲΗΣ (θαλάσσης)「海(属格)」、ΑΛΙΚΑΡΝΑͲΕΩΝ (Ἁλικαρνασσέων)「ハリカルナッソス人(複数属格)」。 キュプロス文字で書かれたアルカディア方言でも単なる/s/とは異なる文字を使用しており、おそらく破擦音だった。 歴史的にはギリシア祖語で *k(ʷ)(ʰ)y, *t(ʰ)y, *tw に由来する音がまず /tʃ/ ないし /ts/ のような音に変化し、「Ͳ」はこの音を表していると考えられる。後にアッティカ、ボイオーティア、クレタ島の方言では「ττ」(tt)、それ以外の方言では「σσ」(ss)に変化した。 文字の起源は不明だが、/ts/ という音を表した点から考えれば、フェニキア文字のツァデに由来するかもしれない。ただし、ツァデならば本来「Π」の後ろに置かれるはずで、数字としてのサンピがΩの後に置かれて900を表す点は異なる。フェニキア文字ツァデに由来する文字としては、Σ(シグマ)と同じ /s/ を表すために一部の地域で使われた Ϻ(サン)があるが、この文字との関係は明らかでない。
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