電子文書の真正な成立の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 17:58 UTC 版)
「電子署名」の記事における「電子文書の真正な成立の推定」の解説
民事訴訟法228条は、「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。」と規定する(228条1項)。民事訴訟では、ある文書をその作成者として記載されている者(作成名義人)によって作成されたものとして証拠に用いるには、まずそのこと(その文書が本当にその作成名義人によって作成されたものであること=真正な成立)を証明しなくてはならない。 例えば、甲が乙を訴えた訴訟において、甲・乙の署名押印がある契約書を甲が証拠として用いるには、(甲自身については自認すれば良いとして、)乙が本当にその契約書を作成したということをまず証明しなければならない。しかし過去のある時点で行われた(作成という)行為を証明するのはなかなか困難なことである場合が少なくない。 その負担を緩和するため、民事訴訟法は228条4項で「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定し、229条1項では、「文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる」と規定している。 これにより、甲は契約書にある乙の(ものとして付されている)署名押印が確かに乙のものであるということを証明すれば、反証されない限りその契約書を証拠として用いることができるのである。そして、その契約書に乙の実印による押印がされていて、かつその印影が乙の印鑑証明書のそれと一致するのであれば、その押印が乙の意思によるものであることもまた経験則上容易に推定される。 乙の実印による押印と印鑑証明書が付されていることによってその契約書は、(それに反する事実を乙が証明しない限り)真正な成立の証明に多大な労力を費やすことなく証拠として用いることができるわけである。 電子署名法は、電子文書はその内容について本人による電子署名が行われているときは真正に成立したものと推定すると規定している(3条)が、これは民事訴訟法228条4項の電子文書版ということができる。
※この「電子文書の真正な成立の推定」の解説は、「電子署名」の解説の一部です。
「電子文書の真正な成立の推定」を含む「電子署名」の記事については、「電子署名」の概要を参照ください。
- 電子文書の真正な成立の推定のページへのリンク