遺伝子の相同性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 12:36 UTC 版)
遺伝学では、相同性という言葉はタンパク質のアミノ酸配列や遺伝子の塩基配列が共通の祖先をもつときに用いられる。この相同性はオーソロジー(種分岐相同性)とパラロジー(遺伝子重複相同性)の二つに分けられる。 ある相同な配列が種分化によるものである場合、それらはオーソロガス (orthologous) であるという。すなわち、遺伝子Aをもつ種が存在して、そこから2つの種に分岐した場合、生じた2つの種がもっている遺伝子A'とA"はオーソログである。また、ある生物種において遺伝子重複によって新たに生じた相同配列はパラロガス (paralogous) であるという。 種S (遺伝子A) → 種分化 → 種S' (遺伝子A') / 種S" (遺伝子A")遺伝子A'と遺伝子A"はオーソロガスな関係(オーソログ)である 種S (遺伝子A) → 遺伝子重複 → 種S (遺伝子A1 + 遺伝子A2)遺伝子A1と遺伝子A2はパラロガスな関係(パラログ)である バイオインフォマティックス(生物情報学)などでは、タンパク質やDNAでの相同性は、配列類似性に基づいて判断される。例えば、2つの遺伝子がほとんど同一のDNA配列をもっている場合、それらはおそらく相同であろう。しかし、その配列類似性は、共通の祖先をもつことが原因ではないかもしれない。すなわち、短い配列が偶然に類似している、ということかもしれないし、例えば転写因子のように、特定のタンパク質と結合できるような配列が選択されたから、配列が類似している(つまり収斂進化)のかもしれない。そのような配列は、類似しているが、相同ではない。このように相同性はあるかないかのどちらかであって、「相同性が高い」「ホモロジーが低い」といった表現は誤りである。これはたいていの場合「配列類似性が高い」「シミラリティーが低い」と言い換えることで適切な表現になる。DNAやタンパク質の配列の類似性を高速に調べるためのツールとして、BLAST、FASTAなどがある。
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