適用の限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 03:41 UTC 版)
メンデルの法則の再発見以後、すぐにメンデルの遺伝子は染色体上にあると考えられるようになる(染色体説)。このことは独立の法則と大きなかかわりをもつことになる。 メンデルの法則は、遺伝子の性質よりも、染色体のふるまいの説明に近い面がある。独立の法則に関しても、これは染色体はそれぞれバラバラになっており、互いに引き合ったりはしない、という風に解釈できる。ただ、遺伝形質の数は、一種の生物について数百以下ではあるまい。他方、ほとんどの生物では染色体数は数十個以下である。このことは、染色体1個当たり、少なくとも数十個、おそらくはそれを遙かに超える数の遺伝子があることを意味する。そして、染色体がひとつながりの固まりである以上、その上の遺伝子は一緒に動くことが考えられる。その場合、当然それらの遺伝子には独立の法則は働かない。 実際のところ、このことを知っていたと思われるメンデルは予備実験に際して22の対立形質を取り上げているが、本実験ではそのうちの7つに絞っている。現在ではエンドウの染色体数は2n=14であることが知られており、これ以上の数の遺伝子を取り上げれば必ず独立の法則は破綻する。交配実験から、エンドウの染色体数を探り当てたと言ってもいいかもしれない。ただ、メンデルは自分の立てた法則に必ずしも従わない例があることを知っていたから、例外が多数あることを踏まえたうえで、それでもこの法則を取り上げる価値があるとの判断をもったものと思われる。 したがって、メンデルの法則の再発見後、遺伝子が染色体上にあると考えられるようになって、すぐさま独立の法則は問題視されるようになった。
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