運指法の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/04 08:55 UTC 版)
「クロスフィンガリング」の記事における「運指法の例」の解説
ルネサンス・フルートを例として説明する。今日のフルート(モダン・フルート)の祖先に当たるルネサンス・フルートは、木製の円筒に歌口と 6つのトーンホール(音孔)が開いているだけの極めてシンプルな横笛である。通常は楽器を右側に構え、歌口に近い上流側 3つのトーンホールは左手の第2 - 4指で、下流側 3つのトーンホールは右手の第2 - 4指でふさぐ。全てのトーンホールをふさぐと、管内部で振動する気柱の長さが最大となり、最も低い音が出る。テナーのルネサンス・フルートはD管で、最低音は D4(ニ長調のド、すなわちハ長調のレ)である。 全てのトーンホールを閉じてから、歌口と反対側の方からトーンホールをひとつずつ順に開けていくと、管内部で共振する気柱の長さが短くなって周波数が上がっていき、下記のようにニ長調の音階が出せる。●が閉じるトーンホール、○が開けるトーンホールである。 歌口 トーンホール 階名 音名 ◯ ●●●●●● ド (D4) ◯ ●●●●●○ レ (E4) ◯ ●●●●○○ ミ (F#4) ◯ ●●●○○○ ファ (G4) ◯ ●●○○○○ ソ (A4) ◯ ●○○○○○ ラ (B4) ◯ ○○○○○○ シ (C#5) しかし、例えば「ファの#」や「ラの♭」を出したいと思っても、直接出せるトーンホールはない。そこで、次のようにする。 ◯ ●●●○○○ ファ (G4) ◯ ●●○●●● ファ#(G#4) ◯ ●●○○○○ ソ (A4) ◯ ●○●●●○ ラ♭ (B♭4) ◯ ●○○○○○ ラ (B4) このように、出したい音より半音上のトーンホールを開き、下流側のトーンホールをいくつか閉じて音程を調節するような指使いを、上げる指と下げる指が交叉することから「クロスフィンガリング」という。ピアノを弾くときのように、ある指が他の指の上を越え、あるいは下を潜ってもつれ合うという意味ではない。 トーンホールの大きさは管の内径より小さいので、開いているトーンホールより下流側の空気も、ある程度の長さ共振しているため、下流側を閉じることによって共振している気柱の長さを増大させ、音高を下げることができるのである。
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