速度論的および熱力学的塩基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/13 21:03 UTC 版)
「リチウムジイソプロピルアミド」の記事における「速度論的および熱力学的塩基」の解説
塩基としての性質は、反応が速度論的支配と熱力学的支配のどちらを受けるか、という観点から分類できる。LDA のように立体障害が大きい可溶な強塩基は最も接近しやすい位置のプロトンを引き抜く。例えばフェニルアセトンとの反応では2種類のエノラートが生成する可能性がある(フェニル基を持つ側と持たない側の α-プロトンが引き抜かれたもの)。フェニルアセトンを THF、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどの溶媒中 −78 ℃ で LDA 溶液に加えると、速度論的な生成物、すなわちフェニル基を持たない側のメチル基の脱プロトン化が起こった生成物が得られる。 一方、弱い塩基(アルコキシドなど)を用いた場合、出発物質へと戻る反応の速度が十分に速いため、より熱力学的に安定なエノラート、すなわちベンジル位(フェニル基を持つ側)のプロトンが引き抜かれたものが主生成物となる。基質に対して少量の強塩基を用いた場合も弱い塩基を使った時と同様な結果が得られる。例えば水素化ナトリウムの THF またはジメチルホルムアミドけん濁液は、水素化ナトリウムがほとんど溶けていないため表面上でしか反応しない。実際の反応ではまず速度論的に安定なエノラートが生成するが、これが他の分子からさらにプロトンの引き抜きを行うので、結果として熱力学的に安定な中間体を経た生成物が得られる。
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