自然詠の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/01 06:21 UTC 版)
「沖べより氷やぶるる湖(みづうみ)の波のひびきのひろがり聞ゆ」 これは、「写生道」、「鍛錬道」を説き、「写生と称するもの外的事象の写生に非ずして内的生命唯一真相の捕捉なり」と言った島木赤彦の歌であるが、単なる自然描写のようではあるが、そうではない。赤彦の住む諏訪湖を望む小高い丘から見ると、湖の沖より氷が解け広がり波打ってくるのが見える。音が聞こえてくるようだ。冬の長かった諏訪にも音を立てて春がそこまできている。春への希望を与える自然の大きな胎動がある。心を揺さぶる歌である。 「最上川逆白波(さかしらなみ)のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」 この斎藤茂吉の歌は、逆白波という新語を作ってまで吹雪の激しさを詠った自然の叙景のようであるが、その陰に最上川と故郷を心から愛した茂吉の心情がひしひしと伝わってくる歌である。茂吉は「実相に観入して自然、自己一元の生を写す。これが短歌上の写生である」とした。
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