自動真空ブレーキの動作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/30 08:58 UTC 版)
「真空ブレーキ」の記事における「自動真空ブレーキの動作」の解説
自動真空ブレーキには列車の全長に渡って引き通されたブレーキ管がある。通常の列車走行時にはブレーキ管の中は真空になっており、ブレーキは緩められている。ブレーキ管の中に空気が入ってくると、空気圧が各車両のブレーキシリンダーの中のピストンを駆動する。ピストンの反対側には真空が残っているので、その差の力がピストンに働く。機械的なリンク機構によりこの力が制輪子に伝わり、車輪の踏面に押し当てられて摩擦によりブレーキ力が得られる。 この仕組みを実現するための構成部品は以下のとおりである。 ブレーキ管 各車両内を金属のパイプで引きとおされ、車両間は柔軟なパイプでつながれている。列車の末端ではブレーキ管は空気の漏れない栓がしてある。 機関車のエゼクター ブレーキ管内の真空を作り出す。 ブレーキ弁 機関士が操作してエゼクターを動作させたり、ブレーキ管内に空気を入れて圧力を調整する、エゼクターの動作とブレーキ管の圧力調整は別々の制御になっていることもあれば組み合わされたブレーキ弁になっていることもある。 ブレーキシリンダー 制輪子につながったブレーキピストンが中に入っている。 真空計 ブレーキ管内の真空の程度を示す。 図の中では、ピストンが赤で示されている。下側で基礎ブレーキ装置につながっており、ピストンが持ち上げられるとブレーキが掛かる。 ブレーキシリンダー全体は、より大きなケースに入っており、ピストンが動く際に真空を「貯めておく」働きをする。ブレーキシリンダーは、ブレーキ装置の遊び調整を行うために、わずかに動かせるように作られている。このためジョイント・ベアリングによって支持されており、ブレーキ管との間は柔軟に接続されている。ブレーキピストンのピストンリングは柔軟な構造になっており、必要に応じて上側から下側へ空気を抜くことができるようになっている。 車両が使われていない状態で、ブレーキが掛かっていない時には、ピストンの両側での圧力差が無いのでブレーキピストンは下部に落ち込んでいる。空気が次第に隙間から流れ込んでくるため、ブレーキ管やシリンダー内の真空は損なわれている。 機関車が連結されると、機関士はブレーキ弁を緩めた位置に移動させ、ブレーキ管から空気が抜かれて真空が作り出される。ブレーキシリンダーの上側からもブレーキ管を通じて空気が抜かれ、図では緑の部分が真空となる。 機関士がブレーキ弁をブレーキを締める位置に移動させると、ブレーキ管に空気が入ってくる。機関士の操作により、ブレーキ管内の圧力は大気圧に近くなる。この時、図の中で青く塗られている部分は、ブレーキピストンより上の緑に塗られている部分より高い圧力になり、この圧力差がピストンを上へ持ち上げてブレーキを作動させる。機関士は、ブレーキ管内に入れる空気の量を加減することでブレーキ力を加減することができる。 一旦ブレーキを掛けた後、ブレーキ弁を緩めの位置に戻すと、エゼクターが動作してブレーキ管から空気を抜いて再び元の気圧に戻そうとする。この時、ブレーキピストンは素早く戻ってすぐにブレーキ力が抜けるが、ブレーキシリンダー内の圧力が十分下がるまでには少し時間が掛かる。このため、一旦緩めた後にすぐにブレーキを再度掛けようとすると、シリンダー内の真空が足りずにブレーキが弱くしか掛からないという現象が起こる。安全のためには十分空気を抜いて真空度が回復してから列車を出発させる必要がある。
※この「自動真空ブレーキの動作」の解説は、「真空ブレーキ」の解説の一部です。
「自動真空ブレーキの動作」を含む「真空ブレーキ」の記事については、「真空ブレーキ」の概要を参照ください。
- 自動真空ブレーキの動作のページへのリンク