緑色硫黄光合成細菌の光化学反応
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「光化学反応」の記事における「緑色硫黄光合成細菌の光化学反応」の解説
緑色硫黄細菌の光化学反応複合体は、緑色植物の光化学系複合体Ⅰに似ていると言われている。その違いはバクテリオクロロフィルおよび還元物質としてNADHを生産することである。緑色硫黄細菌の光化学反応は緑色植物の電子循環的電子伝達系(光化学系複合体Iを参照)にも良く似る。緑色硫黄細菌の光化学系構成は以下の通りである。 光化学反応複合体反応中心P840、バクテリオクロロフィル、メナキノン(ビタミンK2)、鉄・硫黄クラスター (FX, FA, FB) フェレドキシン NAD+ メナキノン シトクロムbc1複合体(呼吸鎖複合体III) シトクロムc 反応中心粒子は紅色非硫黄細菌と同様、バクテリオクロロフィルのスペシャルペアである。電子は循環的に上記の電子伝達系を回転し、光エネルギーで励起されてプロトン濃度勾配形成のエネルギーを得る。電子伝達過程は以下の通りである。 反応中心P840が光エネルギーを吸収し、電子が励起される。 酸化還元電位の極めて低いバクテリオクロロフィルを初発電子受容体 (A0, E0'= -1.2V) として電子伝達を行う。 次にA1(バクテリオクロロフィル、E0'= -0.8V)、鉄・硫黄クラスター (FX, A, B, E0'= -0.45V) を経てフェレドキシン (E0'= -0.4V) に電子伝達される。 フェレドキシンからNAD+へ電子伝達が行われ、還元物質NADHが生成され、呼吸鎖複合体Iで酸化を受ける。その際、プロトン濃度勾配が形成される。 複合体Iからメナキノン (E0'= 0.1V)、シトクロムbc1複合体 (E0'= 0.15V) へ電子伝達される。その際。再びプロトン濃度勾配が発生する。 シトクロムbc1複合体はシトクロムc (E0'= 0.2V) に電子伝達を行い、電子は再びP840に戻る(1. に戻る)。 緑色硫黄細菌の光化学反応系も呼吸鎖の駆動に使用されており、ATP合成がその主たる目的であると考えられる。緑色硫黄細菌については経路が不明な箇所も存在し(例えばA0、A1がバクテリオクロロフィルであると言う確証は得られていない)、今後の研究が待たれる。
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