細見谷の保全に向けて
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/07 08:27 UTC 版)
細見谷渓畔林は、またしてもかろうじて守られることになった。この渓畔林を今後どのように活用すればよいのか、その具体的な方策はまだ見えてこない。とは言うものの、細見谷にはツキノワグマが棲息しており、まずはその存在を無視することはできない。その理由は、ツキノワグマが細見谷渓畔林(落葉広葉樹の森)で重要な位置を占めており、同渓畔林の自然の豊かさを示すバロメータとして有用だからである。 西中国山地(細見谷が含まれる)のツキノワグマは、本州最西端の地で、孤立個体群として存在している。そのツキノワグマが人里に姿を見せるようになったのは、1970年代に入ってからとされている。それではなぜ、クマが山から里へ下りてくるようになったのか。西中国山地のツキノワグマについて、金井塚務(広島フィールドミュージアム会長)は次のように述べている。「生息域は年々拡大の傾向を示し、現在もその傾向は続いている。これは個体数の増大を反映したものではなく、生息密度の低下に伴う分布で、本来の生息域の環境悪化が原因と考えられる。こうした傾向が続くと、繁殖のための出会いの機会が減少し、個体群は衰退の一途をたどることになる」。つまり、山で暮らせないから里に下りてきたと言うのである。 金井塚は、細見谷渓畔林のツキノワグマについて、次のように述べている。「比較的生産性が豊かな細見谷渓畔林は、西中国山地のツキノワグマ個体群の保全にとって極めて重要な位置にあり、同渓畔林の多様性保存は西中国山地に生息する個体群復活のキーポイントとなる」。『細見谷と十方山林道(2006年版)』p.21(脚注参照)
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