童謡『水口』
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童謡『たきび』で知られる巽聖歌の出世作である。「みなくち」と読む。投稿による児童文学雑誌『赤い鳥』大正14年10月号に最も優れた作品とされる推奨として掲載された。選者の北原白秋は四四四調という斬新な構成と聖歌の感性を褒め称えている。これが縁となって聖歌は白秋門下として研鑽を積むことになった。ちなみに巽聖歌の筆名を最初に使ったのがこの作品である。 聖歌の郷里、東北地方の太平洋側はヤマセと呼ばれる季節風が流れ込むと気温が上がらない。その時期が稲の出穂期に重なると冷害に見舞われることになる。少しでも低温の影響を緩和するために水田に引く水の管理が重要になる。河川から直接引き込んだのでは田の水温が下がってしまう。田に引き込む前に一旦溜めておき、少しでも水温を上げてから田に水を引き込む工夫がなされていた。それが水口である。冷害に苦しめられることの多かった東北地方の農民にとって、水口はとても大切なものだった。
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