積位相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/22 16:58 UTC 版)
位相幾何学とその周辺において、直積空間(ちょくせきくうかん、英: product space)とは位相空間の族の直積に直積位相 (product topology) と呼ばれる自然な位相を入れた空間のことである。この位相は他の、もしかするとより明らかな、箱位相と呼ばれる位相とは異なる。箱位相も直積空間に与えることができ、有限個の空間の直積では直積位相と一致する。しかしながら、直積位相は位相空間の圏における圏論的積であるという意味で「正しい」位相である。(一方箱位相は細かすぎる。)これが直積位相が「自然」であるという意味である。
定義
( ( Xi , Oi ) ) i∈I を位相空間の族とし、
これは直積空間が位相空間の圏における積であることを示している。上の普遍性から写像 f : Y → X が連続であることと fi = pi o f がすべての i ∈ I に対して連続であることが同値であることが従う。多くの場合において component function fi が連続であることを確認する方が易しい。写像 f : Y → X が連続であるかどうかを確認することは通常より難しい。pi が連続であるという事実を何らかの方法で使おうとする。
任意の i ∈ I に対して、射影 pi : X → Xi は開写像である。逆は正しくない。W が直積空間の部分空間であってすべての Xi への射影が開であっても、W が X において開とは限らない。(例えば W = R×R \ (0,1)×(0,1) を考えよ。)pi : X → Xi は一般には閉写像でない。(例えば、2 つの R の直積空間 R×R について、U = { ( x, y )∈R×R | xy = 1 } は R×R の閉集合であるが、p1(U) = p2(U) = R \{0} は R の閉集合でない。)
直積空間における閉包と内部について次のことがいえる。任意の i ∈ I に対して Si ⊂ Xi であるような集合族 ( Si ) i∈I に対して、
が成り立つ。I が有限集合 I = { 1, 2, 3, …, n } のときは、S1⊂X1 , S2⊂X2 , … , Sn⊂Xn であるような集合 S1 , S2 , … , Sn に対して、
が成り立つ[1]。
直積位相は次の事実により各点収束の位相 (topology of pointwise convergence) とも呼ばれる。X における点列(あるいはネット)が収束することとその空間 Xi へのすべての射影が収束することは同値である。とくに、I 上のすべての実数値関数からなる空間 X = RI を考えると、直積空間における収束は関数の各点収束と同じである。
直積位相についての重要な定理はチコノフの定理である: 任意のコンパクト空間族の直積空間はコンパクトである。これは有限個のコンパクト空間の場合について示すのは容易だが、一般の場合の主張は選択公理と同値である。
他の位相的概念との関係
- 分離性
- コンパクト性
- 連結性
- 連結(resp. 弧状連結)空間の任意の直積は連結(resp. 弧状連結)である。
- hereditarily disconnected space の任意の直積は hereditarily disconnected である。
選択公理
選択公理は、空でない集合たちの族の積が空でないという主張と同値である。証明は十分簡単である。各集合から元を選んで積において代表元を見つけるだけでよい。逆に、積の代表元は各成分からの元をちょうど1つずつ含む集合である。
選択公理は積空間の研究において再び現れる。例えば、コンパクト集合に関するチコノフの定理は選択公理と同値なより複雑かつ微妙な主張の例である。
関連項目
- 直和 (位相空間論)
- 誘導位相
- Projective limit topology
- 商位相空間
- 部分位相空間
脚注
参考文献
- Willard, Stephen (1970). General Topology. Reading, Mass.: Addison-Wesley Pub. Co.. ISBN 0486434796 2013年2月13日閲覧。
- 松坂, 和夫 (1968), 集合・位相入門, 岩波書店, ISBN 978-4000054249
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