科学と宗教の違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 08:21 UTC 版)
反証可能性が無い言明や言説の典型例として、「神」・「魂」・「信仰」や宗教的発言等がある。例えば1991年湾岸戦争で、イスラエル政府は国民に防毒マスクを無償で支給することにした。しかし一部のユダヤ教徒はマスクを拒否し、その理由を次のように述べた。 「 われわれは科学ではなく神を信じている。防毒マスクを着用しなくても,神がわれわれを救うつもりなら,われわれは助かるし,神に救うつもりがなければ,防毒マスクを着用したところでわれわれは助からないであろう。 」 「この発言はそもそも反証可能ではない」とされている。何故ならこのような「絶対的」発言は、批判やテストを受けても「絶対」に揺るぎない前提を置いているからである。科学を超越した前提に従えば、どんな選択肢を選んでも、科学を超えたもの(神)が引き合いに出され結論付けられてしまい、結果として「批判的テスト」が行われない。 この点が、科学と宗教の決定的違いとして挙げられている。科学は、自らに対する反証可能性を認めている。つまり科学は「相対的言明」であり、自らが批判的テストを受けて、反証され得ることを認めている。一方で、宗教は試されることを拒否する。すなわち宗教は、いかなる事態が生じようとも、全てを「絶対的言明」 ―― 神や聖なる存在の意志・行為など ―― によって説明する。「絶対的言明」は、自らが相対化される可能性を ―― つまり、批判的テストを受けて反証される可能性を ―― 認めようとしない。 科学的・反証主義的な考え方は、反証可能性を前提としており、そこには 「宗教=信仰不可欠」「科学=信仰不可欠ではない」 という図式がある。反証主義者の代表例であるポパーによると、世界に科学への信仰が存在しているとしても、科学にとって信仰は不要である。
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