直接責任と出資
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 09:39 UTC 版)
例えば株式会社の設立時や新株発行時に株式を取得して株主になろうとする場合、その者は会社に対してその発行価額を払い込む。その後、その会社が負債を抱えて倒産した場合でも株主は会社の債務について責任を負わない(返済する義務がない)。株主は出資によって得た株式の価値を失うが、それ以上の損失を迫られることはない。これを間接責任という。株主は有限責任であると同時に間接責任でもある(間接有限責任)。 これに対して合名会社の社員や合資会社の無限責任社員・有限責任社員は、会社がその債務について会社財産をもってしても完済できなかった場合には自己の財産をその弁済に充てることを迫られる。これを間接責任と対比して直接責任という。無限責任社員と有限責任社員とは、責任を負うべき額にあらかじめ定めた限度があるかないかの違いがある。株式会社の株主や合同会社の社員が間接有限責任を負うに過ぎないのに対し、合資会社の有限責任社員は、直接有限責任を負っているのである(ただし、会社に対し出資を履行していれば、その価額の分については間接責任となる)。 逆に言えば、現実に払込みをしなくても将来の会社債務弁済のリスクを引き受ければ、有限責任社員として出資したことになる。さらに、無限責任社員は金銭以外の信用出資・労務出資(信用力や将来の働きを出資として評価する)もできるので、例えば1人につき100万円ずつ計5人に有限責任社員としてリスクを引き受けてもらい、かつ無限責任社員の信用出資・労務出資を500万円と評価すれば、現実の払込みがなくても資本金1,000万円の会社になる。合資会社の有限責任社員を引き受ける側からすれば、いわば範囲を限定しない根保証の保証人になるようなものである。
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