海洋・海水環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:24 UTC 版)
塩化物イオンを多量に含む海水環境は、ステンレス鋼にとって好ましくない環境といえる。海水環境で問題となるのは全面腐食よりも局部腐食で、鋼種によって程度の大小はあるが、海水環境ではほとんどのステンレス鋼にすきま腐食や孔食の可能性がある。海洋中の付着生物の存在もすきま腐食の原因となる。316系はステンレス鋼の中で耐食性の高い方であるが、316系であっても海水環境への耐食性を持つと言えず、利用範囲は限定される。 港湾や海洋構造物では、経済的理由もあり、海水に晒される箇所の構造材料は塗装と電気防食で対策した炭素鋼や低合金鋼を主体としている。ただし、海水中から大気中にかけての海水飛沫を受ける箇所や潮の干満によって海水に浸されたり外気に晒されたりする箇所では電気防食ができず、また、塗装には経年劣化や損傷の問題がある。そのため、日本では、鋼管構造を採用した海洋構造物に対して、SUS312L のようなスーパーステンレス鋼の薄板で海水飛沫部と干満部を覆って防食する手法が開発され、1997年頃から実用化されている。 海水淡水化設備では、コストを下げる観点からも、ステンレス鋼が活用されている。海水淡水化装置には主に蒸発式と逆浸透式があるが、いずれの方式でも各構成機器にステンレス鋼が利用されている。主に使われているのはオーステナイト系の316系や317系で、蒸発器には高強度かつ応力腐食割れへの耐性が高いオーステナイト・フェライト系の S2205 も使われている。
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