波及効果との区別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 16:44 UTC 版)
乗数効果を扱う場合に、まれに波及効果と混同されている場合がある。経済において、波及効果とは、「風が吹けば桶屋が儲かる」に代表されるように、製品技術的、慣行的、嗜好的につながりのある産業がそれぞれ影響を及ぼしあう状態を指す。乗数効果は、あえて言えばその一種である。 たとえば、自動車生産が増加すると、それを見た鉄鋼業が製鉄所新設を決めたとする。これは波及効果であるが、この段階では乗数効果を発生させているかどうかは分からない。たとえば、製鉄所が新設→建設会社の社員の給料が上がる→社員は自動車の購入を増やす→自動車会社の社員の給料が上がる→社員は住宅を建てる→建設会社の社員の給料が上がる、となれば、これは波及効果のなかで乗数効果が生じている。土木に関わる財政支出が増えることが、建機購入投資につながっても、この局面を切り取って乗数効果とは呼ばない(波及効果と呼ぶ)。 前者と後者の違いは、前者が投資が投資を誘発する現象であるのに対して、後者は、投資が現実の所得になり、所得が消費を通じてさらに所得になるというプロセスである。後者はマクロ的な測定(推計)が可能だが、前者は「何が何に波及効果を及ぼしているか」という因果関係の特定を求める要素があり推計が難しい。「プロ野球チーム優勝の経済効果」や「オリンピック開催の経済効果」「新空港開設による経済効果」などは波及効果の推計である。
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