比喩形象論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/29 05:12 UTC 版)
「エーリヒ・アウエルバッハ」の記事における「比喩形象論」の解説
アウエルバッハは、比喩形象(フィグラ、figura)という表現をキーワードとし、古典古代末期および中世キリスト教の現実感を比喩形象的(figural)と呼んだ。figuraという語は、ラテン語のfiguram implere(=表象を満たす)に由来する。 比喩形象的解釈とは、甲乙2つの事件あるいは人物の関係を定め、甲はそれ自身だけでなく乙も意味し、また乙は甲を包含する解釈である。1つの比喩形象である甲乙は時間的には離れているが、両者とも現実の事件や人物として存在する。たとえば、眠っているアダムの肋骨からエヴァを創造した事件は、イエス・キリストが脇腹を刺されて死の眠りについた事件(キリストの磔刑)の比喩形象として解釈される。前者において後者がすでに告知されており、後者が前者を充足する。キリスト教は、その相互関係の理解、精神の洞察のみが精神的活動であるとした。 これにより、時間的にも因果関係からも無関係な事件が関係づけられて統一される。また、非合理な解釈を納得しうるものとする。古典古代の文章は、豊かな接続語、精密な従属構造や分詞構文をもっていたが、それらはラテン語訳の聖書には引き継がれず、並列構造に富み接続語が少ない内容となった。やがてローマ帝国の滅亡により文字言語が衰微すると、ヨーロッパには比喩形象の解釈が残ったとする。 比喩形象を効果的に用いた作家として、アウエルバッハはアウグスティヌスやダンテをあげている。彼らは、聖書の内容に比喩形象による調和を与えることに貢献した。またアウエルバッハが比喩形象論を構築したのはダンテの研究を通してであり、その成果は『ミメーシス』に用いられている。
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