死と恐怖を詠む
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 06:13 UTC 版)
中城ふみ子の短歌について、その発掘者である中井英夫は「愛と死の歌人」とか、後述のような「前衛短歌」の先駆けであるとは見なしていない。中井はふみ子のことを「恐怖にみちて開かれた眼」を持つ歌人であるとしている。 生といい現実というものの裏側に廻って、その気味悪い凹面を眺めたとき、ついに堪えかねて唇を洩れた悲鳴の鋭さが、いまも読者の耳朶を打つのである。それ以上の何をわれわれは聞く必要があろう。 つまりふみ子は眼前に広がる恐怖に満ちた世界を見据え、詠んだ歌人であるとしている。 そしてもうひとり、中城ふみ子を角川書店に推薦した川端康成は、後に小説「眠れる美女」にふみ子の短歌を引用している。 若くして癌で死んだ女の歌読みの歌に、眠れぬ夜、その人に「夜が用意しくるもの、蟇(がま)、黒犬、水死人のたぐい」というのがあったのを、江口は覚えると忘れられないほどだった。 これを読んだ中井英夫は、川端は「本当は誰よりも深く中城を知り、その死と生を他人事ではなく見守っていた」として、川端がふみ子の短歌にみたものは死そのもの、そして死への共感であるとした。そしてすでにのっぴきらぬもの(死)の手のひらにつかまえられてしまった自覚なしに、川端やふみ子の美を真に理解するのは困難なのではないかとしている。
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