栄養要求株の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/04 06:00 UTC 版)
「一遺伝子一酵素説」の記事における「栄養要求株の発見」の解説
彼らは、ここで一つの発想の転換を行っている。遺伝子に関する生化学的研究は、まず表現形としてのみ見られる突然変異があり、それの生化学的な素性を探る、という形で行われるのが通例である。彼らは、その逆を行くことを考えた。つまり、まずよくわかっている生化学的現象を選び、それに突然変異を起こしたものを探して、それがどのように遺伝子に支配されているかを見ようとしたのである。 具体的には、生物体内でのアミノ酸やビタミンの合成過程に変異を生じたものを探し、その遺伝子との関わりを明らかにする、ということを目指した。彼らはアカパンカビの最小培地では生育できないが、特定の栄養素を追加すると生育可能になるような栄養要求株を探すことを試みた。突然変異は胞子に紫外線などを照射することで人工的に誘発させた。 アカパンカビの最小培地の組成は、主要な栄養源としてショ糖、それに硝酸塩や微量のビオチン以外は無機塩類のみを含んだものである。つまりアミノ酸やビタミン等は含まれておらず、アカパンカビはこの培地の成分を材料にしてこれらをすべて合成する能力を持っている。もし、最小培地では生育せず、何らかの栄養素を追加することで生育可能となる株が出現すれば、その株はその栄養素を合成できない突然変異であると判断できる。その場合、その株は栄養要求性突然変異株であるといわれ、(その栄養素の名)要求株と呼ばれる。
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