未完成発明と明細書記載不備の区別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 09:09 UTC 版)
「未完成発明」の記事における「未完成発明と明細書記載不備の区別」の解説
出願審査は、原則として書面を通じてのみ行われ、現物の調査や現地での調査は行わない。したがって、発明の完成・未完成を判断するといっても、出願審査の実際の手続きでは、明細書を含む書面に記載されている内容から判断される。そのため、発明が完成していて書面に十分に記載されていないだけの明細書記載不備なのか、それとも、そもそも対象が未完成なのか、両者の区別の基準は明確ではなく、判然としないことがある。 この点について、中山信弘『工業所有権法』(109頁)は「書類の上で両者の区別が困難である以上、どちらで拒絶しても違法とまではいえない」とする。 しかし、発明未完成と明細書記載不備の本来あるべき観点の違いを強調した上、明細書の記載のみによって未完成発明とされると、補正が許されて特許される可能性があるものが拒絶される結果となって不当であるので、「自然法則を利用した技術的思想」が当初の明細書に記載されていれば完成した発明の出願があったとして審査するべきとする意見もある。 逆に、これに反対して、竹田和彦『特許の知識』(63-64頁)は、発明未完成とするべきものを明細書記載不備として補正を許すと、不完全なものを早く出願したものが有利になってしまい公正な競争を担保できなくなるとし、後述のトラックレーンにおけるアウトリガ事件と回転体固定具事件を紹介する。
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