旋頭歌の例
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『古事記』では伊須氣余理比賣(いすけよりひめ)と大久米命(おほくめのみこと)との問答として次の歌が収録されている。 胡鷰子鶺鴒 千鳥ま鵐 など黥ける利目 (一八)あめつつ ちどりましとと などさけるとめ 媛女に 直に遇はむと 我が黥ける利目 (一九)おとめに ただにあはむと わがさけるとめ 『万葉集』からも例を挙げる。次は旋頭歌本来の問答・唱和形式のものである。 住吉(すみのえ)の 小田(おだ)を刈らす子 奴(やっこ)かもなき 奴あれど 妹(いも)がみために 私田(わたくしだ)刈る (一二七五)(現代語訳)住吉の小田を刈っておいでの若い衆、奴はいないのかね。何の何の、奴はいるんだが、いとしい女子のおためにと、私田を刈っているのさ。 次の例は問答歌ではないが、第三句と第六句とが共通であり、うたわれたものと考えられている。 霰(あられ)降り 遠江(とほつあふみ)の 吾跡川(あとかわ)柳 刈れども またも生ふという 吾跡川(あとかわ)柳 (一二九三)(現代語訳)遠江の吾跡川の柳よ。刈っても刈っても、また生い茂るという吾跡川の柳よ。 (参考文献 稲岡耕二 「人麻呂歌集旋頭歌の文学的意義」 久松潜一 『上代日本文学の研究』からの引用部より)次の例は詠み人知らずの歌で神体山の三輪山の杉原を女性に、その祝の神官を女性の親に隠喩したとされる旋頭歌である。 み幣(ぬさ)取り三輪の祝(はふり)が斎(いわ)ふ杉原 薪(たきぎ)伐(こ)りほとほとしくに手斧(ておの)取らえぬ (一四〇三) 幣(ぬさ)を手に取り三輪の祝が大切に守る杉原よ。その薪を伐る人は危うく手斧を奪い取られてしまいそう。
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