成熟と喪失とは? わかりやすく解説

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成熟と喪失

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/19 04:42 UTC 版)

成熟と喪失』(せいじゅくとそうしつ)は、江藤淳による日本文芸評論である。「"母"の崩壊」という副題が付く。

概要

1967年河出書房新社の単行本として発表され[1]、のち1993年に文庫化された。

文庫版の巻末にある「著者から読者へ 説明しにくい一つの感覚」によると、江藤がアメリカのプリンストン大学への留学[2]から帰国して1年と3か月が経過した1966年夏から書き始められた。

戦後に発表された日本の文芸作品五つを題材に、そこで描かれる「母性」を中心に論じており、「「成熟」するとは、喪失感の中に湧いてくるこの「悪」を引き受けることである」と本文にある通り、母子密着の強い日本型文化の中では、「母の崩壊」なくして「成熟」はあり得ない、というテーゼが貫かれている。真の近代思想と日本社会の近代化の実相のずれを指摘した、戦後日本の文芸評論の中でも重要な地位を占めた著作と名高い[3]

批評の対象となっているのは、安岡章太郎「海辺の光景」、小島信夫抱擁家族」、遠藤周作沈黙」、吉行淳之介「星と月は天の穴」、庄野潤三「夕べの雲」などの「第三の新人」の作品である。文庫版の解説は上野千鶴子が担当している[4]

書誌情報

脚注

  1. ^ 成熟と喪失 "母"の崩壊 - 国立国会図書館サーチ
  2. ^ このプリンストン滞在中の記録、特にキューバ危機、ケネディ暗殺などの当時のアメリカの情勢については『アメリカと私』に詳しい。
  3. ^ 講談社文芸文庫版内容紹介
  4. ^ 「母の”崩壊”」という副題について、「母の”喪失”ではない。母の”崩壊”である。このことからも、フロイト的な「母からの自立」でもなければ、寺山修司的な「母殺し」の物語でもないことが知れる」と述べている。

参考文献

関連項目




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