愛の調べ (ヴァトーの絵画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/12 18:09 UTC 版)
| フランス語: La Gamme d'amour (L'échelle de l'amour) 英語: The Love Song (The Scale of Love) |
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| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1717-1718年ごろ |
| 素材 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 50.8 cm × 59.7 cm (20.0 in × 23.5 in) |
| 所蔵 | ナショナル・ギャラリー (ロンドン) |
『愛の調べ』 (あいのしらべ、仏: La Gamme d'amour、英: The Love Song) 、または『愛の音階』(あいのおんかい、仏: L'échelle de l'amour、英: The Scale of Love) は、フランスのロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが1717-1718年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。1912年にジュリアス・ワーンハー (Julius Wernher) 卿により遺贈されて以来[1]、ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている[1][2]。
作品
男女のカップルが音楽を奏でる場面は、ヨーロッパ美術、とりわけ北ヨーロッパおよびヴェネツィア派の絵画において長い伝統を持つ[1]。ヴァトーは、木々の茂る美しい庭園や野外で美しく着飾った若い男女が優雅に語り合い、音楽やダンスを楽しむ絵画を描いたが、それらは雅宴画と呼ばれ、フランスの王立絵画彫刻アカデミーがヴァトーに入会資格を与えるために認めた、新たな絵画のジャンルとなった[2]。
本作のギター奏者は演劇の衣装を纏っている。ヴァトーは、この場面を18世紀当時から切り離すために、ギター奏者の古めかしい衣装を描いたのかもしれない。女性のカジュアルな服装は特定の時代のものではなく、男性の服装同様に本場面を時代的に特定していない。彼女は音楽を奏で始めようとする彼を見つめているが、2人がいっしょに演奏することはおそらく、恋の戯れをする機会となっている。男女の描写はまた、ヴァトーの構図と色彩における技術を示している。対角線が女性の足元から楽譜を経由し、ギターのヘッドの部分まで続いている一方、ピンク、赤色、茶色の暖かな調和が見られる[1]。
画面上部には、しばしば境界標としての役割を担った、頭部彫像のある石柱が見える。髭のある彫像の顔はピタゴラスであるのかもしれない。彼は、数学的比率にもとづき音階を発見したと見なされている。本作のフランス語の本来の題名「愛の調べ (La Gamme d’Amour)」はヴァトーの死後数年後に制作された版画に由来するが、ピタゴラスが題名に関連している可能性がある。この題名は、音階、恋の戯れと誘惑の様々な段階、そうした段階を導く音楽を想起させる[1]。
右側には別の男女のカップルが座っており、背景にはさらに別の男女のカップルが場を離れるところが描かれている。子供を膝に載せた女性がギター奏者と座っている男女の間に見える。彼女は背景で男性の連れとともに場を去っている女性と同一人物で、その後の彼女の姿なのかもしれない。子供が背後の男女の恋愛の結果であることは、同様の別のヴァトーの絵画をもとにしたエングレービングに付された詩によって暗示される。その詩の中で、別のヴァトーの絵画に登場する子供たちは、暖かな愛が実ったものとして言及されているのである[1]。
本作の中央にいる男女は、ベルリン絵画館蔵の『野外の宴』の中央左寄りに登場する男性ギター奏者と連れの女性に類似している。ヴァトーは両作品を同時に制作し、1718年までに完成させた可能性がある。本作はベルリンの作品より小さいが、ヴァトーの親密な小品の良い作例となっている[1]。
脚注
参考文献
- 『週刊西洋絵画の巨匠 45 ヴァトー』、小学館、2010年刊行
外部リンク
- 愛の調べ (ヴァトーの絵画)のページへのリンク