干渉性後方散乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/19 09:05 UTC 版)
衝効果のもう一つの原因として提案されているのが、干渉性後方散乱(英語版)である。天体表面にある粒子などの散乱体のサイズが入射光の波長と同程度であり、かつ散乱を起こす粒子の間隔が波長よりも大きい場合、狭い位相角の範囲内で反射光が増幅される。これが干渉性後方散乱と呼ばれる現象である。明るさの増加は、反射光の波の位相が揃うことで強め合うことによって発生する。 干渉性後方散乱はレーダー観測でも確認されている。特に土星探査機カッシーニによるタイタンの波長 2.2 cm のマイクロ波でのレーダー観測では、この波長でのアルベドが大きいことが分かっており、これを説明するには強い干渉性後方散乱が必要であると考えられている。電波での干渉性後方散乱については多くの観測例があり、理論モデルも構築されている。 2006年に小惑星ベスタとの位相角が 0.1° と非常に小さくなり、JAXAや国立天文台の研究者、アマチュア天文家も含めた衝効果の観測が行われた。ベスタの位相角が 0.1° 程度にまで小さくなるのはおよそ100年に1回程度であり、天体観測が光電的に記録されるようになって以降は初めてであった。この観測ではベスタ表面が急激に明るくなる現象が初めて明確に捉えられ、ベスタ表面も衝効果を示すことが明らかになった。この結果は2014年に日本天文学会の欧文研究報告で発表された。この観測では、ベスタで起きている衝効果の原因が干渉性後方散乱であることが突き止められ、多重散乱を起こし、ある程度透明で反射率の高い物質が表層に存在することが示唆された。
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