安定同位体が存在しない理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 10:42 UTC 版)
「テクネチウム」の記事における「安定同位体が存在しない理由」の解説
テクネチウムは比較的軽い元素でありながら安定同位体が存在せず、標準原子量が定められない。これは、テクネチウムが置かれた「位置」による偶然の結果である。中性子数55の 98Tc が最も長寿命な核種だが、これも放射性同位体である。 一般に原子核は、陽子と中性子の数がともに偶数だと安定し、ともに奇数だと不安定となる。さらに陽子数と中性子数の間には最も安定する比があり、ベータ安定線と呼ばれるが、テクネチウムの場合、ベータ安定線に一致する98Tc は陽子数43と中性子数55で奇数と奇数の不安定核種であった。 もっともこれは、原子番号が奇数の元素に共通の現象であり、多くはその次に安定な核種が安定同位体となっている(例えば93Nb や103Rh 、詳細は核種の一覧参照)。ただし、「次に安定な核種」は自動的に「質量数が奇数の核種」となるため、奇数の同じ質量数を持つ核種のうちで安定核種は1つしか存在できない制約(偶数の同じ質量数を持つ核種は、安定核種が複数存在できる)を受ける事となった。中性子数54の97Tc は 97Mo に、同じく56の 99Tc は 99Ru に安定性で劣り、不安定核種となってしまった。 中性子数がさらに多い、または少ない核種は、そもそも安定性の土俵に乗れず、結果としてテクネチウム以外の元素は安定同位体を得たが、テクネチウムだけが安定同位体を得られなかった。かくしてテクネチウムは、安定同位体の存在しない、放射性元素となった。
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