変態停留・不完全変態現象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 15:55 UTC 版)
「ベイナイト」の記事における「変態停留・不完全変態現象」の解説
ベイナイト変態はBs点に近づくにつれて不完全に進行するようになり、Bs点で変態が止まる様子が観察される。いくらかの何も起こらない時間の後に、パーライトの生成が始まる。ここで合金元素を添加すると、パーライト変態温度域の上昇或いはベイナイト変態域の低温側への移動が起こり、この変態温度域で変態に非常に長い時間がかかるようになる。この現象は高温で炭化物の生成が抑制されるためと説明される。この変態が停止するまでの短い時間のうちに、オーステナイトに素早く炭素が濃縮する。 この不完全変態現象或いは変態停留と呼ばれる現象はベイナイト変態機構をめぐる論争の中の大きな論点の一つとなっている。しかし注意しなければならないのは、この現象のベイナイト変態は完全に停止するのではなく、長い時間の後に完全に進むことである。したがって、現象については変態停留、途中で変態を止めることについては不完全変態という用語が適当であろう。 ブラッドレイ(Bradley)とアーロンソン(Aaronson)は変態停留領域について『ソリュートドラッグ効果』(溶質ドラッグ効果、英: solute drag like effect、SDLE)で説明している。このモデルは、ベイナイト変態域において侵入型原子(炭素)の拡散中に、置換型原子が自由に移動できずに相界面に濃化すると考える。この原子のそばでは炭素活量が減り、オーステナイト中のフェライトの炭素拡散の駆動力が低下する。この効果は変態速度を低下させ、極端な場合は濃化した相界面の移動は、この界面に炭化物を形成することによって、停止状態になる。 バーデシア(Bhadeshia)とエドモンズ(Edmonds)は直接の意見表示として、合金元素を添加した場合を例として、炭素活量の低下が変態の停留原因とならないと反論している。加えて、SDLEはベイナイトとパーライトの間の変態停留の領域は説明できるものの、下部ベイナイトと上部ベイナイトの間に認められる二次的な変態停留を説明できないと論じている。
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