境内での喧騒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 03:25 UTC 版)
ちょうどその日は富の当日で、境内は大勢の人でごった返していた。 「千両当たったら質屋を始める。自分でやるなら置きに行く手間が省けるから…」 なんて頓珍漢なことをいっている奴がいるかと思うと、「私には一番は当たらない。その代わり二番が絶対当たる」と怪気炎を上げている奴もいたりする。 「夕べ枕元に神様が立って、『お前に一番富を当てることが出来ない』と言うんですよ。それを無理やり拝み倒したら、『二番を絶対当てる』と約束してくれたんです」 「へー。で、当てたら如何するの?」 「まず、全部細かにして、紺色の反物で作った、一反(約36cm2)もある特注の財布を作ります」 吉原〔新町〕へ行って馴染みの女郎を口説き落とし、身請けするまでを一人二役の大熱演。 「で、当たらなかったら?」 「うどん食って寝ちゃおうかな…」 大騒ぎをしていると、寺社奉行〔世話方〕が出てきていよいよ富の抽選開始。 「一番富は《子の千三百六十五》か。次は…あ、『神様』の人!」 「ハイハイ、私です。私の札は《辰の二千三百四十一番》、最初は《辰》!」 子供のかん高い声で〔世話方が当たり札を読み上げ〕「おん富にばーん〔第二番のォ、おんとォーみィー〕、たつのォ…」 「ガハハハハ、これぞ神のお告げ! 次は《二千》!」 「二千…」「《三百》!!」「三百…」「《四十》!!」「四十…」 「すごい人だよ、おい…。気合で数を呼び寄せてる…」 「ここですよ、女を身請けするか、うどん食って寝るかの別れ目は。《一番》!!」 「しち(七)番…」 「ウーン…」 バタン、キュー! 物凄いことになっている境内に、さっきの『似非金持ち』がやってくる。
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