喉音の直截的な写映形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/04 03:07 UTC 版)
明確な例証はアナトリア語派に限られる。ヒッタイト語のḫ (hh)、ルウィ語の h、リュキア語の x がある単語はPIEの *h₂ を持つ語根の写映形である。 アナトリア語派における *h₂ の写映形PIE語根意味アナトリア語派における写映形同根語*peh₂-(s)- '防御する(protect)' ヒッタイト語 paḫḫs- サンスクリット語 pā́ti, ラテン語 pascere (pastus), ギリシャ語 patéomai *dʰewh₂- '息/煙(breath/smoke)' ヒッタイト語tuḫḫāi- サンスクリット語dhūmá-, ラテン語 fūmus, ギリシャ語 thūmos *h₂ent- '前(front)' ヒッタイト語 ḫant- サンスクリット語ánti, ラテン語 ante, ギリシャ語antí *h₂erǵ- '白/銀(white/silver)' ヒッタイト語ḫarki- サンスクリット語árjuna, ラテン語 argentum, ギリシャ語 árguron, トカラ語A ārki *h₂owi- '羊(sheep)' ルウィ語 hawi-リュキア語 xawa- サンスクリット語 ávi-, ラテン語 ovis, ギリシャ語 ó(w)is *péh₂wr̥ '火(fire)' ヒッタイト語paḫḫur, ルウィ語 pāḫur 英語fire, トカラ語B puwar, ギリシャ語 pûr *h₂wéh₁n̥t- '風(wind)' ヒッタイト語 ḫūwant- 英語wind, トカラ語A want, ラテン語 ventus, ギリシャ語 aént-, サンスクリット語 vāt- *h₂stér- '星(star)' ヒッタイト語ḫasterz 英語 star, サンスクリット stā́, ラテン語 stella, ギリシャ語 astḗr *h₂ŕ̥tḱo- '熊(bear)' ヒッタイト語 ḫartaggaš サンスクリット ṛ́kṣa, ラテン語 ursus, ギリシャ語 árktos' *h₂ewh₂os '祖父(grandfather)' ヒッタイト語ḫuḫḫa-, ルウィ語ḫuḫa-, リュキア語 χuge- ゴート語 awo, ラテン語 avus, アルメニア語 haw *h₁ésh₂r̥ '血液(blood)' ヒッタイト語 ēšḫar, ルウィ語 āšḫar ギリシャ語 éar, ラテン語 sanguīs, アルメニア語 aryun, ラトヴィア語 asinis, トカラ語A ysār 一部のヒッタイト学者は *h₃ が、共鳴音の直後と語頭のみであるが、ḫ としてヒッタイト語に保存されていると提案している。Kortlandtは h₃ が *o を除く全ての母音の前で保存されていると考えている。おなじように、Kloekhorstはこれらが共鳴音の前で同様に失われたと考えている。 アナトリア語派における *h₃ の写映形PIE語根意味アナトリア語の写映形同根語*welh₃- '叩く(to hit)' ヒッタイト語walḫ- ラテン語vellō, ギリシャ語ealōn *h₃esth₁ '骨(bone)' ヒッタイト語 ḫaštāi ラテン語 os, ギリシャ語 ostéon, サンスクリット ásthi *h₃erbʰ- '状態を変える(to change status)' ヒッタイト語ḫarp- ラテン語 orbus, ギリシャ語 orphanós' *h₃eron- 'ワシ(eagle)' ヒッタイト語 ḫara(n)- ゴート語 ara, ギリシャ語 ὄρνῑς *h₃pus- '性交する(to have sex)' ヒッタイト語 ḫapuš- ギリシャ語 opuíō
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